【7 ほんとうの自分は】
森が嫌い。怖いから。
森が嫌い。その力が、
かつて、──を傷付けたから。
だけど怖いままにしたくなくて、
森に行けば、心臓が激しく痛んだ。
あの傷は今はない。
幻痛だと分かっているのに、
どうしてこんなにも苦しいの?

「…………」
それでも尚、頑張ろうとしたら。
セツカが、現れて。
僕の嘘を見抜いてた。
僕が演技で笑ってるって、分かってた。
君の目は誤魔化せないらしい。
あは、は、は……。

「……話しちゃった」
ぜんぶ、ぜんぶ。
墓場まで持っていくと決めていた秘密、まで。
鏡に映っているのは虚像だった。
ねぇ、全て繋がったでしょう?
話したら、ちょっと心が軽くなった。
泣きそうになってたの、隠した。
……ありがとう、セツカ。
だけどそう。僕はひとつ、気付いたんだ。

「──“僕”は、誰?」
誰もその名を呼ばないから。
思い出せない、思い出せないな。
僕自身も、僕のことを忘れてしまっている。
だって“僕”は、誰にも必要とされなかった。
頭が良過ぎたから、臣下の企みにもすぐに気付いて。
誰もこんなの、必要としてくれなかった。
僕自身も、そんな僕なんて要らなかった。
空白な僕。嫌い、嫌いだ。
演じるだけで、何にも成れないで。
秘密吐き出して空白に気付いて、
少し惨めな気持ちになった。

「……僕は、誰、なの」
あぁ、誰か、名前を呼んでおくれよ。
僕だってもう分からないのにさ。
誰が覚えているの? そんなもの。