Eno.105 火の四天王の日記

同族



オレが生まれて間もない頃、一度だけ同族に会った事がある。
長い冬が去り、極寒のエゾデスに暖かな風が戻って来た頃合いだった。

初めて見た同族は、オレと同じように炎を纏っていたものの、その在り様は自分とは全く別のように思えた。
彼(もしくは彼女だったか)とそう多くは語らなかったが、その内容は今でも覚えている。


この間の大寒波で多くの同族が自然に還り、生き延びた同族は彼だけということ。
寒波が去ったことで大陸中の炎のマナが安定し、新たにオレが生まれたということ。
失った仲間に会える事を密かに期待し、オレと顔を合わせたこと。
…その期待は叶わなかったこと。


それでも彼は、オレの先達として何かを残そうと、少ない口数をさらに減らしながら絞り出す様に言葉を紡いだ。

光を放ちて、どこから来たのか。どこへと行くのか。
私たち、火炎生命体の前に立ちはだかる永遠の命題だ。」


「寿命も定かでは無く、生命のバトンを繋ぐ先も無い我々には、生死の意味を求めることすら容易ではない。」


「意味のある生を求めなさい。私やかつての仲間たちのように、ただそこで燃え、燻り、消えてゆく炎にならない様に。」



元々気難しい性質だったのか、彼の言い回しは要領を得ないところが多く、今でも理解できない部分も少なくない。
それでも、彼の放つ言葉には重さがあった。


その日から、自分の生きた証を残そうと、がむしゃらに行動に移した。