Eno.583 BlancusとYayauikの日記

Microcosmos04



 夢を見た。
 温かくてやわらかい、小麦とバターの香りがする夢だ。
 小さな台に乗って、一生懸命背伸びして、やっと覗き見るテーブルの上。
 丸い膨らみが気になって、腕を伸ばしてつんと指先で触る。
 僕のやわらかくて小さな世界。
 夢中になってつんつんつついていたら、こら、と頭の上から声がした。

 やわらかな世界は、そうしてよく笑っていた。
 それは僕の世界でもあったので、僕にとっても嬉しいことだった。
 小麦とバターの香りがする。
 もうちょっと待ってね、と笑う背中にしがみついて、ぐりぐり頭を押し付けた。
 小麦とバターの香りがする。
 その中にほんの少しだけの、血の臭い。
 温かくてやわらかい、僕の世界。
 誰かに盗られないように、ずっとこうして捕まえておかないと。
 そう思っていたのに。


.