Eno.1073 府高木 西三の日記

嵐が去った

 結局夜いっぱい嵐だったな。途中でちょっとだけ弱まってたようだが。
 しかし嵐の中で釣りするもんじゃない。ロープが釣れた時は割と本気でなんだこれになったし。たぶんどっかから飛んできたのが引っかかったんだろうな。
 しかし、嵐が何か運んでくるかもしれないとは思ったが。

 船がそのまま来るとは流石に思ってねーんだよ。

 だがまぁ米があったので許す!

 許すも何も無いがそういう気分だった。
 塩にぎりもたぶん、今食ったら泣くんじゃねぇかこれ……。

 まぁもちろん他にも色々見つかった訳で。
 クッキー缶があったからちびっこにあげたら1枚分けてくれた。本当に良い子だな。
 他にも何やら船の設計図とかも見つかったらしい。
 ……俺もサンゴとネックレス拾ったし、海賊帽子があった辺り、海賊船じゃねーかって感じだが。
 人はいないから、使える物はありがたく使わせてもらおう。
 なお、船の漂着と、船を作ると聞いて、色々思い出したが、それは別の話だ

 にこにこマークの石像もそろそろ作ろうかって話になってるし、無人島とは思えないメニューのパーティーの計画も進んでる。
 漂着したとはいえ船があるんだから、この近辺を船が通るっていうのも信憑性が上がったしな。

 長くても、今日を入れてあと3日。
 悔いだけは残らないようにやっていくか。




思い出した事
 そう、思い出したんだ。ここに来る前の事を。
 まだ俺自身や周囲の人間、地名といった固有名詞は思い出せないが、大体の事は。
 俺はまぁ、その、平たく言えば、秘匿された神秘を継承する系の家の生まれで。神秘が一般に明らかにならないように秘匿しつつ、神秘関係の問題をこっそり解決する仕事をしていた。
 だから神秘関係には詳しかった訳なんだが。
 その一環で、異世界の存在もかなり前から知っていた。

 ただし。
 俺の世界ではある事件以降、ある分野の神秘が世界中に広がった。
 大混乱だったよ。国もいくつか潰れたし、難民も大量に出た。
 それでも何とか、表も裏も人間社会の体裁を取り繕えて来たのがここ1年ほどで。
 だからたぶん、気付かなかったんだよな。

 俺達、神秘側の人間以外に、既に異世界と接触している奴がいたなんて。

 とはいえ、俺としてはそう驚きでも無かった。そりゃそうだろ、ぐらいなもんだ。
 ところが世界に広がった神秘を研究している奴らは大騒ぎ。自分達がまだ手を出せていないところに、ド素人の部外者が手を付けているとは、とかなんとか。
 ……だからと言って、その本人に手を出すところまで一足飛びに行かなかったのは、アホ程プライドの高いあいつらにしちゃいい判断だといっていい。
 んだが。

 その情報を得て、神秘側の人間も、異世界への接触を試みようとする。これはいい。
 実働部隊に、未だ秘匿されているが故に立場の低い俺達が選ばれるのも、まぁいい。
 だが。

 サンプルが欲しいから・・・・・・・・・・異世界の存在を、連れて帰れ。
 これは、こんなのは、ただの、誘拐だろうが……!


 ……一応、兄貴がかけあって、連れて帰る判断、及び、連れて帰った後の全ての行動と権利は、連れて帰った人間に一任され、この権利は例外を一切認めない、という条件をもぎ取って来たから、まだマシだが。
 それでもやっぱりちょっとあいつら一回〆た方がいいんじゃねぇかと、キレながらそれでも既にうちの世界に来ている異世界人とやらの様子を見ようとして……。
 海岸近くを通ってたら、波に攫われてここに来てたって訳だ。

 はーぁ。
 確かに人に言えない事もやってきたっちゃやってきたが、人間として最低限の部分は守ってたんだがなぁ……。