Eno.691 明日の分霊の日記

無常

己が消えたのかと錯覚した。
………記憶に残っていないのなら、いないも同然。もちろん、知ってたよ



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ガリガリガリ、机に向かう。
考察を重ねて、ラットを重ねて。
もう何回、朝ごはんを作っていない。
もう何日、昼ごはんを食べていない。
もう何年、夜ご飯を食べていない。

もうずっと、眠っていない。

そんなもの、もう必要ない。
今はただ、なにかに縋っていたかった。



ハザマの息子もまた、天才だった。
弱冠13歳で71の魔術を習得。
15歳で未踏術式、広域型多重影幻覚術式を確立、実証。
その後僅か3年で“魂の観測“に成功、現状実証は不可能ながら、“死者蘇生式“が成立する事を証明した。

同時期、ハザマは『異世界 “界洋“ 開拓計画』を思案。
……何者かによって盗まれ、その要項が世界に露見。

国は国家を挙げて該当プロジェクトを進めることを発表。

ハザマは自宅を弟子であった青年に譲渡し、国家の研究機関に入った。



「この国は、あの子息子には狭すぎる。だから広げるんだ。」


そうやって、ボクを置いて


「あのバカは、本当にどうしようもない」

「ただひとりの息子の為に、世界を壊すか?普通の父親が。」

「お前の事も放置して。………恋人だったんだよな、お前達は。」

「ハア?違う????んなわけねぇだろ身体の関係だってあったろお前ら」

「……………………………………………………ほんと、ありえねぇ……」










バキ、バキバキ。


机に向かう。研究室に閉じこもる。
貴方がひとつ、なしえなかったことがある。
貴方がひとつ、たどり着けなかった世界がある。


バキ バキバキ


これは遺言だ。挑戦状だ。あの人が残した、最後の術式だ。

ああ、ああ、あああ!!!嫌いになりたかった、こんなにこんなに憎いのに、憎いのに、悔しいのに!!!




愛なんて、愛なんて物のせいで!!!!






























───────転生式。

オルドはハザマの死後、遺言の様に残されたそれに固執し、長い時間をかけて習得。とある無名の吸血鬼への転生を果たした。
その後、現在と進化を司る岐路のロードの骸を喰らった事で『記憶消去』能力が進化し、感染と世界規模に広がる特性を得た事で魔法の域に到達。
半世紀後、新たなロードとして知られる事となる

回想はここで終わりだよ。分霊ななし