Eno.428 村人の日記

とある村と村人の話 3

「最近、近くの国が領土を広げているらしい」

村から一番近いシークロー国が魔族に対抗するために近隣の街を傘下にいれ、国力、兵力を増強しはじめ、それは東端にある村にまで広がっていた。

「おい、まずいんじゃないか」

村人の誰かが呟く。村の中で魔物が暮らしているなどと知られれば、村は魔族の仲間と思われてしまう。
頭の硬い連中には事情を説明した所で理解されるはずも無い。村で一番魔物と親しい青年が、魔物を逃がす役目を負った。

「……そんな顔、するなよ」

人とは違うその顔。それでも、今どんな表情をしているのか手に取るようにわかっている。それくらい、一緒に過ごしてきたのだ。

それでも。

「……もう、こっちには来ちゃ駄目だぞ……お前の事を守ってくれる仲間のところへ……行くんだ」

悲しげな鳴き声ひとつ。
それから魔物は森の奥へと消えていく。

青年はじっとその背中を見つめていた。