Eno.378 白波の眷属の日記

ささやき 8

小屋に落ちている貝殻を耳に当てると、かすかに呟く声が聞こえる。

「ようやく嵐が行ってくれて、かわりに船が来たねえ」



「乗ってたはずの、ひとの子はいなかったけど」
「トマトやラム酒なんて宝をおいて、みんな海へいっちゃったのかも……」



「ぼく、舟ってすきなんだ。
 いっしょにとおくの海までつれていってくれるし、ひとの子がにぎやかにのっているから」
「のせてもらえなくても、木の底にこっそり、ついていくこともできるしね」



「この島のお祭りもすき。
 きれいな花火をあげて、それをみながらおいしい貝や、甘い氷を食べるの」
「カレーライスもはじめてたべたよお」
「さいしょは口のなかがびっくりしちゃったけど、すごく……おいしかった!」



「おぼえているお祭り?と、ぜんぜんちがっていたけど、たのしかったな」
「これなら、ひとの子がだれも海にはいらなくてもできるものねえ」







「漂流船の甲板で、とくべつな貝のアイスをたべていたらね、
 いろんなことがうれしかったり、かなしかったりして、胸がいっぱいになっちゃった」




「船がきてくれるかどうか、みんな助かるかどうか、先のことはわからないけど……
 ぼくは……」