トトの手記17
僕の小船は、まあそれなりに良いものとなっただろう。
木造船など乗ったことがないので、正直なところ不安でもあるのだが、この僕が製作したのだからきっと大丈夫であろう。僕は賢いので。それにしても、肉体労働はこの体にはとても堪える。木材を適切な形に切り、簡単に組みたててから釘を打ち、それを何度も繰り返す。おかげで僕の真っ白な手には小さな傷が出来てしまっている。
それでも、気分のいいものである。今まで島の住民にはとても世話になったのだから、少し時間をかけてでも何かしてやりたかった。ああ、僕が手先が大変器用で賢くて良かったね。
して、その小船は休息をとっている間に、カニの手(ハサミ?)によって更なる改築が進められていた。あんなに小さな体で、こんな大きな船を?あんな時間で?
常々思ってはいたが、この島で最も特異なのはこのカニであろう。毒きのこを食して天啓をうけたり、何とも豪勢なプリンをドラム缶で作成したり、セトから聞くには同族と戦い負けたそれを皆に振舞ったらしい。何なのだ。知れば知るほど、このカニには謎が増えていくものである。
船の方に話を戻すが、カニが手を加えた船の名は『ネオ・蟹工船』。
この島の住民はネオだのスーパーなどが好きすぎる。だが、ネオ・蟹工船は皆で乗るには十分すぎる大きさで、うさぎの友人である何とも不気味なマネキン……いや、ラビ、シー、名無しも共に乗せられるだけのスペースがある。僕がせっかくだからと施したカニのレリーフはそのまま残されており、なんだか様になっていた。人生においてまさかカニと共同作業をすることになるとは思わなかったが、まあいい思い出となっただろう。もう二度と同じ体験はできないであろうからね。
そうだ、これは書き記さねばなるまい。名づけの大好きな住民たちによってついにこの島は国になった。『ネオ・タバコ国島』。なんと安直で投げやりで、愉快な名前だろう。僕はとある石碑を拝見したため、この島の本来の名を知っているのだが、似ても似つかない大胆な名前に笑ってしまう。何とも自由で賑やかなこの国にはこの名が相応しいのかもしれないね。まあ、未だに煙草は発見されていないのだが。(そもそも、漂着した際に濡れて駄目になったのならば、この島に新たに流れ着いたそれも使用できないのではないだろうか?と思うのだが、それは野暮であろう。)
きっと、この国での花火大会は良いものになるであろうね。積み重ねた思い出と共に炎の花を空に打ち上げ咲かせるのだ。きっと、きっと、美しいのであろう。
そうだ。その時が来れば、用意しておいたそれも共に打ち上げてやろう。大きな子供のための最後の贈り物であるからね、楽しみにしているといい。
船が出来てしまったし旅の支度もこっそりと済ませた、もう少しで君のもとへ帰れそうだ。
オーラン、君は一人で寂しくはないか?
僕は、僕は罰が当たってしまいそうなほど暖かな環境ですごしているよ。ここにはセトもいるし、新たに小さな友人……と呼べそうな存在も出来た。君に早く会いたくてたまらないのに、この島を離れるのも惜しいと思ってしまっている。ごめんよ、君にこれ以上寂しい思いをさせる気はないのだ。
でもね、これは僕の推察に過ぎないのだけれど、ここで出会った彼らとは、国へ戻ったらもう二度と会えないんだと思うのだ。
だって、禍津神陽を知らない日本人なんているわけないものね。それにセトに対してあんなに友好的なのだよ。和解が済んでいるとはいえ、少しくらい抵抗があってもいいだろうに皆、セトのことを珍妙な人か何かだと思っているんだ。そんなこと、ありえないものね。
僕は、寂しい、ただ寂しく思うよ。初めの夜の寂しさとは違うのだよ、オーラン。君に会いたくて泣き言を吐いていた時とは違うのだ。こんな感情を君以外の人間に抱くなんて思ってもみなかった。
ああ、僕はこの島の住民が思っていたよりも好きになってしまったようで、今は何とも離れがたくも思ってしまうのだ。
国に戻り、この漂流体験記を執筆した際には、この島の住民に捧げることとしよう。
ねえオーラン、なかなかにいい案だと思わないかい?
木造船など乗ったことがないので、正直なところ不安でもあるのだが、この僕が製作したのだからきっと大丈夫であろう。僕は賢いので。それにしても、肉体労働はこの体にはとても堪える。木材を適切な形に切り、簡単に組みたててから釘を打ち、それを何度も繰り返す。おかげで僕の真っ白な手には小さな傷が出来てしまっている。
それでも、気分のいいものである。今まで島の住民にはとても世話になったのだから、少し時間をかけてでも何かしてやりたかった。ああ、僕が手先が大変器用で賢くて良かったね。
して、その小船は休息をとっている間に、カニの手(ハサミ?)によって更なる改築が進められていた。あんなに小さな体で、こんな大きな船を?あんな時間で?
常々思ってはいたが、この島で最も特異なのはこのカニであろう。毒きのこを食して天啓をうけたり、何とも豪勢なプリンをドラム缶で作成したり、セトから聞くには同族と戦い負けたそれを皆に振舞ったらしい。何なのだ。知れば知るほど、このカニには謎が増えていくものである。
船の方に話を戻すが、カニが手を加えた船の名は『ネオ・蟹工船』。
この島の住民はネオだのスーパーなどが好きすぎる。だが、ネオ・蟹工船は皆で乗るには十分すぎる大きさで、うさぎの友人である何とも不気味なマネキン……いや、ラビ、シー、名無しも共に乗せられるだけのスペースがある。僕がせっかくだからと施したカニのレリーフはそのまま残されており、なんだか様になっていた。人生においてまさかカニと共同作業をすることになるとは思わなかったが、まあいい思い出となっただろう。もう二度と同じ体験はできないであろうからね。
そうだ、これは書き記さねばなるまい。名づけの大好きな住民たちによってついにこの島は国になった。『ネオ・タバコ国島』。なんと安直で投げやりで、愉快な名前だろう。僕はとある石碑を拝見したため、この島の本来の名を知っているのだが、似ても似つかない大胆な名前に笑ってしまう。何とも自由で賑やかなこの国にはこの名が相応しいのかもしれないね。まあ、未だに煙草は発見されていないのだが。(そもそも、漂着した際に濡れて駄目になったのならば、この島に新たに流れ着いたそれも使用できないのではないだろうか?と思うのだが、それは野暮であろう。)
きっと、この国での花火大会は良いものになるであろうね。積み重ねた思い出と共に炎の花を空に打ち上げ咲かせるのだ。きっと、きっと、美しいのであろう。
そうだ。その時が来れば、用意しておいたそれも共に打ち上げてやろう。大きな子供のための最後の贈り物であるからね、楽しみにしているといい。
手記の最後が少し無理矢理折り畳まれている。
船が出来てしまったし旅の支度もこっそりと済ませた、もう少しで君のもとへ帰れそうだ。
オーラン、君は一人で寂しくはないか?
僕は、僕は罰が当たってしまいそうなほど暖かな環境ですごしているよ。ここにはセトもいるし、新たに小さな友人……と呼べそうな存在も出来た。君に早く会いたくてたまらないのに、この島を離れるのも惜しいと思ってしまっている。ごめんよ、君にこれ以上寂しい思いをさせる気はないのだ。
でもね、これは僕の推察に過ぎないのだけれど、ここで出会った彼らとは、国へ戻ったらもう二度と会えないんだと思うのだ。
だって、禍津神陽を知らない日本人なんているわけないものね。それにセトに対してあんなに友好的なのだよ。和解が済んでいるとはいえ、少しくらい抵抗があってもいいだろうに皆、セトのことを珍妙な人か何かだと思っているんだ。そんなこと、ありえないものね。
僕は、寂しい、ただ寂しく思うよ。初めの夜の寂しさとは違うのだよ、オーラン。君に会いたくて泣き言を吐いていた時とは違うのだ。こんな感情を君以外の人間に抱くなんて思ってもみなかった。
ああ、僕はこの島の住民が思っていたよりも好きになってしまったようで、今は何とも離れがたくも思ってしまうのだ。
国に戻り、この漂流体験記を執筆した際には、この島の住民に捧げることとしよう。
ねえオーラン、なかなかにいい案だと思わないかい?