Eno.241 平木 夕真の日記

苦手:お化け

・生命活動の停止した個体と同期する際の留意事項

───同期相手の最期の瞬間の記憶は、差し迫った必要がない限り同期から外す事。


この島に流れ着いて五日目の夜中。
岩場の罠だけ見回ってきてもう一度横になる。

しばらくぶりに、あの夢を見た。






───もし同期から外した上でもその記憶が流れ込んで来る場合は、所定の機関でロックをかけること。

ユマの視点で、急斜面を転げ落ちる光景。
枝を折り、ツルを巻き込み、岩に当たって跳ねる。

視界が暗転する。“わたし”の視点に切り替わる。






───また、そうなった場合
───決してロックをかけないまま、長期にわたり放置しない事。

横たわっていたはずのユマは、ボロボロのままそこに立っている。
虚ろな目で、しかし確かに“わたし”に視線を合わせてくる。

谷に降り立った瞬間、金縛りに遭ったように動く事が出来なくなった“わたし”に対して、

「    」

弱々しく何か声を出しながら、少しずつ近づいて来る。

「    」  「    」

分かっている。『返して』だろう。
ユマのフリをして今までのうのうと生きてきた。
この島での不思議な体験だって、
本来ユマが……すべき………





───チューンしたモーターみたいな、甲高い音が聞こえる。ようやく薄目を開ける。



───寝てる間にかいた汗を拭いながら人が集まってるあたりを見ると、カニルが高速で走り回っていた。




「ここでの体験をユマがすべきかどうかは、一考の余地があるな…………」



 この夢を見た後は、首筋が冷たい。
 外気に晒していると、何かを背後に感じるほどに。
 いつもの具合に戻るまで、フードを被っておこう。