Eno.274 ミトリムシの日記

ミトリムシに関する学術会議 議事録1

ミトリムシと一緒に流れ着いたバッグ。
その中を漁ると、海水に塗れてもうほとんど読めない議事録の束がある。


「本当にミトリムシはいたんです! 一時的な変異ではありません!」


絶滅した後、もう目撃例のない種族について証明するのは難しい。
遺伝子からの道程や研究をもう一度行い、きちんと変異ではないことを証明するには発見が遅すぎ、種の消失が早すぎた。


 本当にそのクラゲはいたのだろうか?


断片しか読めないその議事録では、しかし断片だけでもわかる程に、熱心に一人の研究者がその存在を肯定していた。一方、他の研究者の意見と言えば冷たいものだ。証明できないことをあると説明することは、科学の世界ではタブーなのだから。


 そこに何かはいたのだろう。あったのだろう。けれど、


「ええ。個体がまだいれば可能性はあったのでしょう。けれどそこにはなにもないんです。○○博士」


これで会議を終了します、の一言で締めくくられた議事録に書かれた博士の名は。
……そのバッグに書かれた持ち主の名とも、一致していた。