ミトリムシに関する学術会議 議事録2
議事録の2冊目は、比較的可読性があった。
それでも海水に浸かってふやけた印刷物は、所々滲んでしまっている。
前回の会議から丸一年。あの博士はまだミトリムシが存在したと証明できる確たる証拠を見つけられないでいたらしい。そして遂にその会議のベクトルは『ミトリムシは存在せず、ハブクラゲが一時的に変異したもの』と多数決で決定されていた。
議事録とは、会議で発言された一つ一つを全て文字に書き起こした文書である。
きちんと、博士が最後まで諦めていなかったことも残っている様子だった。それと。
「博士……帰りましょう。もうやめましょう」
唯一の助手と思われる人間の台詞も。
「私はまだ続ける。海の中にまだいるかもしれないんだ。ミトリムシの生き残りが――」
その後も博士がミトリムシを探し続けていたことも。
――クラゲは知らない。何も分からない。
自分がその博士と会ったこと。唯一の証明人である博士に何をしてしまったのか。
何故こうして人間のように漂えるのか。
どこからきて、どこへいくのか。それが正しいことなのか。間違っていることなのか。
ひとり、海の中であるはずの地点でぷかぷか漂っているだけだ。
そこにはなにもない。
それでも海水に浸かってふやけた印刷物は、所々滲んでしまっている。
前回の会議から丸一年。あの博士はまだミトリムシが存在したと証明できる確たる証拠を見つけられないでいたらしい。そして遂にその会議のベクトルは『ミトリムシは存在せず、ハブクラゲが一時的に変異したもの』と多数決で決定されていた。
議事録とは、会議で発言された一つ一つを全て文字に書き起こした文書である。
きちんと、博士が最後まで諦めていなかったことも残っている様子だった。それと。
「博士……帰りましょう。もうやめましょう」
唯一の助手と思われる人間の台詞も。
「私はまだ続ける。海の中にまだいるかもしれないんだ。ミトリムシの生き残りが――」
その後も博士がミトリムシを探し続けていたことも。
――クラゲは知らない。何も分からない。
自分がその博士と会ったこと。唯一の証明人である博士に何をしてしまったのか。
何故こうして人間のように漂えるのか。
どこからきて、どこへいくのか。それが正しいことなのか。間違っていることなのか。
ひとり、海の中であるはずの地点でぷかぷか漂っているだけだ。
そこにはなにもない。