Eno.586 クリア・レインの日記

□虚

本当の名前を教えて呼び合うっていうのは
魔術的に、かなり危険な行為だ。
だから、偽名を使う魔法使いだっている……ってのは、師匠センセイの受け売りだけど。

だから俺は、他人の名前を絶対に呼ばない。
名前を教えて呼び合うっていうのには、信頼と信用がいる
どちらも、俺には荷として重すぎる。
其れに、こうして笑っていれば、名前を呼び合わなくても
誰かと過ごす分には不足無い。
不和を起こさず、協力する姿勢を見せていれば問題ないし

……俺の名前を誰かが呼ぶのはセーフなのかって?
俺は捨て子だから、俺の本当の名前を俺は知らないんだ。
俺の実の両親(生きてるのかどうかも分かんないけど)だけが知ってる。

クリア・レインは、あくまで生きるのにあたって師匠が与えてくれた名前だ
レインは師匠の姓だから、一応家族ってコトになるのかな。
……クリアって名前を、俺はまだ受け入れられてない
10年近く、この名前なのにね。

透明クリアってのはね、確かに何色でもない状態だけれど
 だからこそ、誰かと居ればその色を透かし映す事が出来るんだ。
 
 ……私は君に、色んなイロと関わって、色んな景色イロを見て
 好きな色に染まって育って欲しい』


師匠は、そう言ってたけれど
俺にはまだこの名前を、空虚クリアな自分自身を表すモノとしてしか認識できない。
……生きていれば、いつか師匠の言う様な人間になれるんだろうか
分からないけど、今は、まぁ、皆の姿イロを眺めて生きてみるよ。