Eno.1007 ステルキア・レイアードの日記

昔のこと

ある日ひとは
熱烈に村を守る色の精霊様を求めました。
その精霊様もひとの期待に応え、
ひとの世界に下りようとしました。

けれど、その精霊様は
うつわが無いと下りる事が出来ない。
そういう事がわかりました。

ひとは、色々なものを用意しました。
精霊様のすがたを描いた石版。
精霊様の好む花を咲かせる大樹。
聖なる血を流すひつじ。

幾度もひとは精霊様を迎えようとしますが、
それでもうまくいきません。
そうして、ひとびとは精霊様の事を
忘れはじめていきました。


ところがある日、
ひとびとの村に真っ赤な危機がおとずれました。
すべてが真っ赤に染まるなか、
ひとりのおんなが泣き叫びながら
自分の子供のなきがらを
精霊様にお供えしました。

精霊様はその声にこたえ、
その子供のなきがらに身を下ろし
虹色に輝いて人知れず、
村を危機からすくったのです。


めでたしめでたし


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しかし、ニンゲンは
真っ赤な危機から救ったその精霊様の事を
全ては認めませんでした。

聖なるモノに宿るとされたその精霊が、
汚いモノに宿る事は許されなかったからです。

精霊様はニンゲンから隠されるように祀られて行き、
村の奥の祠に追いやられ、一部の者達以外からは
精霊様は次第に忘れられていくようになりました。

やがて、ニンゲンの変わり者が、
「色の精霊なのに、
 こんな灰色の場所に閉じ込められて可哀想だ」と嘆き、
「外の今の人間の世界を見てみないか」と精霊に提案します。



『これで良かったのか?』
「何が?」
『ニンゲン達に関わったお陰で、今や無人島だぞムジントー!
 しかも時間制限付きと来た!
 幾らお前の身体でも海の底はヤバヤバのヤバだぞ、きっと!』
「んー…そうだねぇ。」

少し、考える。

「けれども、こんなコト。こんなモノ。
 部屋の中に居たままじゃ分からなかったからね。
 それはそれで良いんじゃ無いかな。」
『お前はやっぱり何処か抜けてんな。』

呆れたようにソレは言う。
いずれにせよ、あと1日で。
目の前の島は青に飲まれていく。
寂しいと想う気持ちが、確かにあった。