Eno.17 神速のバンバの日記

ささいなおはなし

 
とある森に
泉があった



透きとおる水が
波紋をつくり

溢れた水は
草を食んだ

水走る獣道は
生き物を育んだ

田畑を潤し
実りをもたらした

母なる海に辿り着き
帰り来る魚を迎えた

泉の水走るところに
篝火は絶えなかった



人々はもっと
多くの豊かさを欲した

森を切り開き
土を捻じ曲げ
石を敷き詰めた

辺りはもっと多くの
光に溢れた

その頃にはもう
泉を覚えている者は
いなかった



小さな薮の中
藻に淀んだ
沼が残った