Eno.10 戦士の日記

酒場

魔王軍に入る前、一人旅をしていた頃。
路銀が尽きたので仕方なく王都サポロスの酒場で働いたことがある。

店主
「マジで一銭も持ってないとは」


「すみませんでした」


店主
「今すぐ黒髪短髪精悍真面目男性になってくれんか?」


「無茶言うな」


店主
「まあちょうどパートのオバちゃんが実家帰っちゃったから助かるッピ」


「そりゃどうも」


店主
「欲を言えば死の淵を彷徨い絶望的な状況でもけして諦めずに抵抗する強者が欲しいッピ」


「どんな店だよ」



獣人のマスターはちょっと変わってはいたものの、
店は夜になると日々の憩いと潤いを求める人々で賑わっていた。

様々な人種が入り乱れる王都でも、
誰もが飲んで食わねばやってられんことは同じらしい。
ここで出している酒と料理は本当にウマかった。
(看板メニューはビールとジンギスカン。
 俺のおすすめはホタテバターとスープカレー。ビールにも合う)

自分で手間暇かけて作ってもうまいことにはうまいのだが、
不思議と、人の作ったメシというものはウマいのだ。
何か見えないスパイスのようなものが効いているのだろうか?

こうして過ごしている間にも魔族と人間との闘いは続いているというのに、
王都の街を照らす明かりは絶えず、寒空に浮かぶ星は燦然と輝いていた。