Eno.132 エルディス・エアリアルの日記

悪夢

「……でさ、僕、流石にひとりじゃ………」

目の前で、琥珀色の癖毛をした少年が話している。
少年は俺の反応が鈍いのを見ると、目の前で手を振った。

「おーい。ディータ?大丈夫?」

その名前で呼ばれたのは、いつぶりだったか?

間違いない。空を映したような目をした、コイツは。

『エルディス………?』

「うん、僕だよ。大丈夫?ディータ。さっきからぼーっとして」

今、目の前で。
目の前で、一番の親友エルディスが喋っている。

ふと視界に入る髪は、長く真っ直ぐな黄金色。


そうだ、そうだ。全部夢だったんだ。

エルディスが死んだことも、みんながどこかに行ってしまったことも。

 そうだ、そうだ。全部夢だったんだ。

 ネリスは聖女として聖都から皆を導き、モルトはそれらを守っている。

フィルは村の者たちと和解して、魔法の街の復興をしている。


 それで、俺たちは。俺達は2人でクエストを受けながら、旅を続けているんだ。

『……ああ、すまない。少々疲れがな』

「珍しいね。でも、流石にマタンゴの群れはちょっとキツイものがあったからなあ」

『そうだな。マタンゴに踊らされている貴様は中々傑作だったぞ?』

「な、なんだと〜?!それを言うなら、君だって!」

『俺の方が討伐数が多いからいいんだよ』

「え〜?!それを言うなら僕の方が発見数多いよ?!」


 言い合って、それからふとお互いの顔を見合わせて。


「……ぷっ」『……ふふっ』

「『あははははは!!!』」


 大笑いして。

 宿に向かって、飯を食って、明日の計画を練って、眠る。


 そうしてやってきた朝に笑いながら目的地へと向かうんだ。他愛のない、しょうもない話をしながら。


 そうだ。全部夢だったんだ。

「そうだ、つぎのーーーーー」

 なにもかも

『ーーーーはなににーーーー』

 ぜんぶ

 ーーーーーーディータ


…………。


………………………。


…………………………………………。











どうして、こんな悪夢を見てしまったんだ。

もう、二度と戻ることは無いと知っているのに。

アイツの代わりに死ななかった俺への罰なのだろうか。………そうであってほしいな。