人間における魔物の認知と、その処遇について(続)
───その人間は、辺境伯を叙された地方の貴族らしかった。
自尊心が頗る高く、易怒性で魔物どころか動物さえ
虐殺して悦びを覚えるような随分歪んだ性格だった
ので、小生でさえ彼を知性の欠片もない動物だと思った。
人格はとても褒められたものではなかったが、
唯一魔法だけは覚えが良かったのか、
小規模部隊の指揮官としてエゾデス各地を巡り、
魔物を討伐しては生計を立てていたようである。
小生は丈夫な体に恵まれこそしたものの、
魔力というものに対してはとんと免疫がなく、
こと魔法や呪具のような縛りに対しては無力だった。
捻くれた魔法使いは、引き連れた部下にしたり顔で
得々と語る。

迷宮自体が複雑であるだけでなく、呪いの手枷と
結界魔法によって、魔物は内側に閉じ込められ、
決して脱出することはできなかった。
小生は、ここで死ぬのだと悟った。
─────────
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───

数十年を経て、魔物の呻き声以外の"言葉"を聞いた。
体は瘦せ衰えて見上げる気力さえ湧かなかったが、
凛としたその"言葉"は、若々しい女性のようだった。
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久しぶりに発する"言葉"に、喉が震えた。

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───そこで、初めて、小生は尽き果てる寸前の力を
振り絞って、面を上げた。

───窪んだ眼窩が捉えた、その神々しい御姿を
小生は生涯忘れることはないだろう。
ただ、一心不乱に、小生は麾下となりたい旨を力説した。
……神は少し困惑したように、隣の人影に助言を仰いだ。

自尊心が頗る高く、易怒性で魔物どころか動物さえ
虐殺して悦びを覚えるような随分歪んだ性格だった
ので、小生でさえ彼を知性の欠片もない動物だと思った。
人格はとても褒められたものではなかったが、
唯一魔法だけは覚えが良かったのか、
小規模部隊の指揮官としてエゾデス各地を巡り、
魔物を討伐しては生計を立てていたようである。
小生は丈夫な体に恵まれこそしたものの、
魔力というものに対してはとんと免疫がなく、
こと魔法や呪具のような縛りに対しては無力だった。
捻くれた魔法使いは、引き連れた部下にしたり顔で
得々と語る。

「これから、アッバーシリの監獄迷宮に向かう。
何を隠そう俺はその監守という訳さ。
いわゆる個人所有のダンジョンだが、中では
呪いの手枷をした数百匹の魔物を飼っている。
……そう、そこで弱った奴を殺し、
俺は経験値を稼いでいるのだよ」
迷宮自体が複雑であるだけでなく、呪いの手枷と
結界魔法によって、魔物は内側に閉じ込められ、
決して脱出することはできなかった。
小生は、ここで死ぬのだと悟った。
─────────
──────
───

「お前が、このダンジョンの主か」
数十年を経て、魔物の呻き声以外の"言葉"を聞いた。
体は瘦せ衰えて見上げる気力さえ湧かなかったが、
凛としたその"言葉"は、若々しい女性のようだった。
「…………いえ、主は人間の魔法使いでございます」
久しぶりに発する"言葉"に、喉が震えた。

「あの傲岸な男がそうだったか」
「…………お会いに、なられたのですか」

「殺した」
───そこで、初めて、小生は尽き果てる寸前の力を
振り絞って、面を上げた。

───窪んだ眼窩が捉えた、その神々しい御姿を
小生は生涯忘れることはないだろう。
ただ、一心不乱に、小生は麾下となりたい旨を力説した。
……神は少し困惑したように、隣の人影に助言を仰いだ。

「……小生の命は、いわば余暇でございます。
夢幻の様なものでございます。
陛下の見る夢が齎したものなのですから、
その使い所はとうに定まっております」