夢3

「この島はもうすぐ沈んじゃうから、手短に話すね。」
「船にのって、もし元の世界に戻ったら、あなたはたくさんの人に「悪いように利用」されてしまう。
だから、そうならないように、私のすべてをあげようと思う。」

「・・・!」

「記憶はさっき見せたから・・・。次は体の詳細な構造とか、感覚だね。さっ、握手しよう。」

「まって・・・!」
いい終わるより前に、右手は彼女に固く握られていた。
彼女の周りにあるほのかな輝きが、握られた手を通して流れ込んでくる。

「・・・・・。」

「よし、これで五感がよりはっきりしたね。これからはちゃんと靴、はくんだよ。裸足で岩場を歩くなんて、もってのほかだからね!」

「最後に・・・感情!」
右手は彼女に固く握られたまま、なすすべもなく流れ込む光をただ受け入れた。

「どうして、私は、」

「だって。あなたはあの悪い人たちとは違うでしょ。
私は、ちゃんとあなたに生きててほしいと思ったの。どんな背景があれ、命ってものは尊いでしょう?」

「とうとい・・・?」

「そう。尊い。それに、これ以上誰かが犠牲になるのは見たくなかったから、私なりのリベンジ、かな」
あなたは消えてしまうのか、と問えずにいると、彼女は弾けたような声でこう続けた。

「さぁ! これであなたは完璧に人間を模倣できる!私の素体の中にいる必要もない!
首の後ろの根本を押せばいつでも外に出られる!」

「あとは、遠隔での”アポトーシス”対策だけど・・・。 さすがに世界を飛び越えて電波が届くことはないからね。
これは、元の世界に帰らずにいることくらいしか思いつかないなぁ。模倣そのものに関わる遺伝子に組み込まれているし、生きている限り仕組みが壊れることもないだろうから。ごめんね・・・。」

「私は、どうすればいいの?こんなにたくさんのこと、返せない。」

「あなたはあなたのしたいように生きればいいの。食べたいものを食べて、楽しいことをして、それでたくさんやりたいことをやる。」

「あなたのしたいようにいきる、やりたいことをやる・・・。」

「そう。その通り。それでいい。」
ふいにふわりと風がふき、彼女の姿が大きく揺らいだ。

「あ、さよならだね。かなり駆け足になっちゃった。あはは。」
言いながら、どんどん彼女の姿は透明になっていく。
(何か言わなくちゃ!何か!)

「っ・・・! 」
「っ ちゃんと生きる!」

「うん。」
その言葉を最後に、彼女の姿は完全に消えてしまった。