Eno.984 ミアの日記

夢3

どこまでも広がる砂浜と海岸。空は青く、二人のほかには何もない。

「この島はもうすぐ沈んじゃうから、手短に話すね。」

「船にのって、もし元の世界に戻ったら、あなたはたくさんの人に「悪いように利用」されてしまう。
だから、そうならないように、私のすべてをあげようと思う。」




「・・・!」




「記憶はさっき見せたから・・・。次は体の詳細な構造とか、感覚だね。さっ、握手しよう。」



「まって・・・!」



いい終わるより前に、右手は彼女に固く握られていた。

彼女の周りにあるほのかな輝きが、握られた手を通して流れ込んでくる。



「・・・・・。」




「よし、これで五感がよりはっきりしたね。これからはちゃんと靴、はくんだよ。裸足で岩場を歩くなんて、もってのほかだからね!」


「最後に・・・感情!」



右手は彼女に固く握られたまま、なすすべもなく流れ込む光をただ受け入れた。


「どうして、私は、」



「だって。あなたはあの悪い人たちとは違うでしょ。
 私は、ちゃんとあなたに生きててほしいと思ったの。どんな背景があれ、命ってものは尊いでしょう?」



「とうとい・・・?」




「そう。尊い。それに、これ以上誰かが犠牲になるのは見たくなかったから、私なりのリベンジ、かな」



あなたは消えてしまうのか、と問えずにいると、彼女は弾けたような声でこう続けた。

「さぁ! これであなたは完璧に人間を模倣できる!私の素体の中にいる必要もない!
 首の後ろの根本を押せばいつでも外に出られる!」




 「あとは、遠隔での”アポトーシス”対策だけど・・・。 さすがに世界を飛び越えて電波が届くことはないからね。
 これは、元の世界に帰らずにいることくらいしか思いつかないなぁ。模倣そのものに関わる遺伝子に組み込まれているし、生きている限り仕組みが壊れることもないだろうから。ごめんね・・・。」




「私は、どうすればいいの?こんなにたくさんのこと、返せない。」



「あなたはあなたのしたいように生きればいいの。食べたいものを食べて、楽しいことをして、それでたくさんやりたいことをやる。」



「あなたのしたいようにいきる、やりたいことをやる・・・。」



「そう。その通り。それでいい。」



ふいにふわりと風がふき、彼女の姿が大きく揺らいだ。

「あ、さよならだね。かなり駆け足になっちゃった。あはは。」



言いながら、どんどん彼女の姿は透明になっていく。

(何か言わなくちゃ!何か!)

「っ・・・! 」
っ ちゃんと生きる!



「うん。」








その言葉を最後に、彼女の姿は完全に消えてしまった。