◼︎表舞台
エララ・C・ビスケットは、留年続きのみっともない淑女だ。
⋯そう、大祖母がつくった世間体は学園中に留まらず社交界の噂好きによって
もはや本人が何をやっても修復不可能なレベルで『常識』と成った。
卒業後一度も会ったことがない男との結婚を行うのは、嫁の貰い手がない私への慈悲らしい。
「は、は あははは⋯⋯」
才能の枯れた女、過去の栄光に縋り学園に留まり続ける女、唯一の勉学を失った女。
それらを可哀想だと、差し伸べられれる手をありがたく思えと。

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯、⋯⋯⋯。」
「⋯⋯⋯ッスー⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」
くだらない。何かを思い、何かを期待し、何かに心労を割くなどくだらない。
上質な愛の言葉なんてどこにあるのか。崇高な友情なんてどこにあるんだ。
培った絆の重みなどどこにもないじゃないか。輝かしい栄光がいつまでも色褪せないなんてウソだ。
一番手短な『家族』で試した。
きいたのよ、『家族』ってせかいで一番強くて頼もしい『こころ』の集まりだって。
時間と、手間と、惜しみない財を投じて。
かんじたのよ。のりこえてこそ深まる『きずな』ならこの程度、らくしょうでしょう?
罠を張り、舞台を整え、台本を書いて。
がんばってよ。あらがってよ。うけいれないで。あきらめちゃだめ。どうして。ばかみたい。うすっぺらい。
表舞台から抹消されたなら、観客席から物語を、
世界を、破壊するしかないでしょう。
⋯たのしかったの。はじめて、勉強以外をたのしいって、おもったの。
わたしのては、こころは、いつまでも6さいでとまっていた。
握り返すのはいつも、無機質な手すりだけだった。