Eno.1032 アリアンロッドの日記

6日目_7

・第一文明
この世界、または諸島に興った最初の文明。言い伝えという形での記述が特徴。
【未知の記録α】:この世界の始まりを示した資料。天の使いが魔素を含む海を齎し、そこから得られる奇跡を「力」と称したと考えられる。
【未知の記録ε】:魔術は海の賜物であり、己だけの力ではない、と戒める資料。この警句は顧みられなかったようだ。
【未知の記録μ】:海の魔素が動植物にも変異と恩恵を授けているとする資料。魔素を獲得した植物は塩害に強い、どころではない力を持つらしい。浮沈を繰り返すこの諸島に、栄える自然の理由の一端を示している。
【未知の記録ο】:海の魔素の結晶化技術と、そこから興った『魔術』について記された資料。それまでは祈りによる奇跡でしか起こり得なかったことが技術に零落したことが伺える。
【未知の記録ω】:さらなる魔力を求める声に、天の使いは更に水を与える形で応えたとする資料。全てが海に沈む形で第一文明の滅亡。第二文明には以降記述としても出てこず、天の使いの正体は不明。


・第二文明
第一文明の後に興った魔術文明。口述筆記や個人的な日記も多く、多くの資料が残っている。『世界の外から叡智を呼び込む』魔術の開発によって異世界人を拉致、その叡智によって発展したと推測される。このため、遺伝子編集家畜や人造の植物の開発などはこの時代に分類すべきだと考える。
【未知の記録β】:海のミネラルで育つ“パンの木”の完成を喜ぶ研究者の口述筆記資料。砂利や砂浜で生育しないが、現在の諸島は浮沈を繰り返すため環境に合致したと思われる。これは現在「丸いきのみ」として入手できる。
【未知の記録γ】:長靴の串焼きを好む変人の口述筆記資料。
【未知の記録δ】:シーグラスについての口述筆記資料。結晶化した魔力だと考えられたのも一時期、であることから、シーグラスには宝石以上の価値がないと考えられる。
【未知の記録ζ】:技術的、資材的にもありとあらゆる努力にも拘らず、“揺蕩う『星』”だけは食べられなかった、とする資料。ヒトデのことだと推測される。……卵巣くらいは食べられなかったのだろうか?
【未知の記録η】:機能するエラを後付けした遺伝子編集生物の資料。種としての定着が確認された後、恐らくはこの島周辺に放逐されたものと考えられる。実験生物を野外に放逐するな。
【未知の記録θ】:この地域一帯の気候についての口述筆記資料。海が近いため、嵐が激しくなりやすいようだ。嵐に耐えるべく、この地域では、(遺構の様式からして)石造が標準的だったと考えられる。
【未知の記録ι】:土壌の成分から合成樹脂を生み出す植物の完成を喜ぶ研究者の口述筆記資料。記録βと同一人物のようだ。塩害に強くしたマツやゴムの木で良かったのではないだろうか。これは現在「ギザギザした野草」として入手できる。
【未知の記録κ】:海底に宮殿を発見した旨の口述筆記資料。様式から、第一文明の遺構を発見した第二文明のものと推測される。海を割るほどの力を持つ人物について、詳しいことは不明。
【未知の記録λ】:恐らくは救荒作物を開発している研究者の口述筆記資料。記録β、記録ιとは別人。現在「四角いきのみ」「円筒形のきのみ」として見られるものも、人造の植物のようだ。
【未知の記録ν】:鳥類の一種で産卵数を増やそうとした研究の結果、無性生殖をするようになったという研究者の資料。記録ηと形式が同一。現在「トリ」として見られる種を指しているものと推測される。屋外に産み付けられた卵は全て孵ってしまうため、体内に残った未熟な卵しか「卵」として手に入れられないのだろう。
【未知の記録ξ】:かつての文明の遺物を読み解く研究者の資料。この文明の遺物とは、第一文明を指しているものと思われる。
【未知の記録π】:王室が『世界の外から叡智を呼び込む』魔術を開発した旨の資料。第二文明ではこれ以降、この魔術による“拉致”が頻繁に行われたと推測される。筆者は異世界人の融通を拒否している。
【未知の記録ρ】:袂を分けた魔術師と科学者により、王国が内紛に発展した旨の記述。記録πと同一人物の可能性が高い。筆者はこれを避けるため、以降地下に工房を移している。現在遺跡として見られる研究室は、この人物のものなのだろう。
【未知の記録σ】:筆者が魔術攻撃の被害を被った旨の資料。記録ρと同一人物。避難する間もなく家内を失った男が、復讐者に堕ちたことが伺える。
【未知の記録τ】:筆者が研究室の引っ越しと共に、雑多な資料と、王国の『世界の外』へ干渉する術式の一部を盗み出したとする資料。記録σと同一人物であり、時系列はおそらく記録ρの後ろ。術式を盗み出す辺り、最初から王家に強い叛意があったと推測される。
【未知の記録υ】:独自の術式の完成を急いでいる旨の資料。記録τと同一人物であり、時系列は記録σの後ろだと考えられる。
【未知の記録Φ】:かなり個人的な資料。記録υと同一人物。遠い未来に滅んだこの地を訪れる者に向けて、せめてもの賑やかし、と独自術式にお遊びを加えた旨。ハリボテに過ぎないという記述から、これら複製資料が納められた箱を示している可能性が高い。
【未知の記録χ】:かなり個人的な資料。記録Φと同一人物。開くか閉じるか、この海の選択に思いを馳せる、という記述から、筆者の独自術式は異世界と接続した上で「海に意志を宿す」または「自律性を与える」ものと推測される。
【未知の記録ψ】:筆者が独自術式を起動した旨の資料。記録χと同一人物。予測通り、異世界と接続するものであるが、恐らく他の世界の海と繋がっている?これにより、全てが海に沈む形で第二文明滅亡。以降この術式がまだ生きているとするなら、現在の状況に辻褄が合う。海開き、という単語と、この世界は二度目の滅びを迎えるという旨。