Eno.105 火の四天王の日記

どこから来たのか、どこへ行くのか。

初めは、ただひたすらに役に立とうとした。
極寒のエゾデスでは、熱を帯びるこの身体を役立てるのに困らなかった。
寒さに震える魔族が居れば、寄ってその体を温めた。
降雪を前に立ち往生する者を見かけたら、熱を放って道を切り開いた。

その都度感謝をされて、偶に差し入れなんかも貰った。
その度「ヒト助けも悪くないな」なんて思っていたが、

光を放ちて、どこから来たのか。どこへと行くのか。


彼の言葉が胸をチクリと刺す。

「意味のある生を求めなさい。そこで燃え、燻り、消えてゆく炎にならない様に。」


コレは違う・・・・・」とオレは思った。
そう思いながらも、他に生きる術も理由も無く、ただ惰性でそれを続けていた。

ある日、四天王の一角が勇者に討たれ、その勇者を魔王様が討ち取ったという話が広まっていた。
勇者討伐の宴をするとか、魔王様が民衆の前で演説をするのだとか、それが本当かは知らないが国全体が浮足立っていたように思えた。
勇者、四天王、魔王。どれも遠く聞き馴染みのない単語ではあったが、それぞれが強い力を持つ存在だという事は知っている。
普段なら祝い事なんて気にしない性質だったが、自分の国の長を見てみるのも一興かと、喧騒の方へ足を運んだ。

魔王城の前には魔族たちがひしめき合っていて、何かの行事が始まる瞬間を今か今かと待っている様子だった。
しばらくして、城のバルコニーからソレ・・は表れた。

初めて、魔王という存在をしかとその目で見た。
遠く未来を見据えているような壮大さが、
遥か古代から存在し続けているかのような威厳が、
絶対的な強さとそれ故の孤独が、
ただそこに在るように感じ取れた。


話の内容はあまり覚えてなかった。
勇者を討ち取った事、その過程で四天王の一角が敗れ去った事、空いた四天王の座に就きたい者を求めている事。
皆、彼女が話している間はしんと静まり返って、一区切りつく度に彼女の発した言葉についてめいめい語り出した。
そんな静寂と喧騒がつゆほど気にもならない位、オレは彼女に魅入られていた。

光を放ちて、どこから来たのか。どこへと行くのか。


彼女もまた、久遠の彼方から何処へと向かう光。
あの光が向かう先に、自分の行く末がある気がして。
あの光をより近くで追いかければ、自分の生きる意味を得られる気がして。

考える間もなく、オレは魔王軍の門を叩いた。