Eno.428 村人の日記

とある村と村人の話 6

村は、魔物を倒した勇者を称え、感謝の意を伝え、蓄えを使って宴を開いた。

疲れ切っていた村に、たしかに明るさが取り戻された。

久々に響く笑い声を遠くに聴きながら男は一人で薪を切る。毎日毎日続けていた動きは、何も考えずとも体が動く。

勇者が村を出たら、また日常がやってくる。
変わらない日々が嫌になった訳では無い。誰も気づかなかった事が悲しい訳では無い。村のみんな事は大切だし、本当ならば傷ついた村をみんなと共に直していかなければならない。

それでも、一度、世界をみなければと、そう思った。

「村を助けてくれた恩に、報いたいと?」
「お願いします」
「ふむ……いいだろう」

村長の許しを得て、晴れて男は勇者一行として村を出る。

恩義を返すため。まだ見ぬ世界を知るために。