Eno.439 四条 環の日記

絶海の孤島の、小さな生活のかたちと足跡

私がこの島に流れ着いて、同じ遭難者さん達と共に協力して、
なんとか一日を過ごして、を繰り返してはどれくらい経っただろうか。
日の落ちた回数を数えるに、恐らく一週間くらいは経っていると思うけど、
長いようですごく短い時間だったから、あんまり実感は沸かなかった。

遭難して、所謂サバイバル生活というものを経験した。
普段の生活だったら作らないようなもの、初めて名前を聞くようなものすらも、
素材を探して、集めて、道具を組み立てて、一から作ってて。
そして、完成品をじっと見た時に初めて、ああ、本当に私達が作ったのだと体感するのだ。

その体感を作ってくれる施設達は、気づけば島中に建てられていた。
色んな人たちが自分の手で作って、あるいは協力して、
作り上げてきた私達の生活の足跡。

多くの人たち生活の根本となった拠点。
たくさんの物たちを蓄えてくれた倉庫やコンテナ達。
倉庫のそばに置かれ、島の連絡を担ってくれた書き置き。
冷えた夜にそっと囲みたくなるような大きな焚き火台。
太陽が強く照りつけた日とかに側に寄って涼みたくなる氷室。
探索で汚れてしまった手を、石鹸と一緒に綺麗にしてくれた洗面台。
色んなきのみを粉にして、調味料を作ってくれた石臼。
もくもくと煙をたてて、美味しいパンを焼いてくれた窯。
嵐の時に、私達のことを守ってくれた頼もしい安全壁。
お日さまの力を借りて、綺麗なお水へと変わる蒸留器。
雨の時、私達の代わりに水を貯めててくれる雨水溜め器。
砂浜と森林に住むヒト達が、生活の拠点とした東屋。
広々と、ゆったりとくつろげるようにした、大きな岩風呂。
ロープで拵えて、動物さん達が引っかかるのを待った狩猟罠。
網を張って、お魚さんや海藻が集まっているのを引き上げた漁罠。
森林で汲んだ泥水をそのまま飲めるようにできる濾過装置。
私達を、新たな離島や流れ着いた漂流船に誘ってくれた浮桟橋。
草木を掻き分けるよりも、ずっと歩きやすくなった手入れされた道。
人魚さんが泳げられるように、拠点まで繋げた水路。
真っ暗な夜を月と共に優しく照らしてくれる灯台。
みんなでご飯を食べるための、大きくてとっても広いテーブル。
……たくさんのご馳走を、分け合って食べたこと、
あの味を今でも鮮明に思い出せる。

いつの間にか新たな文明を築けてしまうくらいに、
賑やかで文化的な、私達だけの場所となった。

きっとここは、「クルシュナイ」が、いっぱいある島。
沈んでしまっても、私達がいたことをずっと覚えていてくれるように。
たくさんの資材を積んで、筆記具で想いを綴って、石に願った。

どうか、あの星空へと届いてますように。
沈んでしまっても、そこに足跡が残り続けてますように。