Eno.606 聖涙竜の遺仔の日記

No,30_遺跡、未知の箱、其の中身

"天の使いが一人、空から舞い降りた。
天の使いは何もない一面の陸に水を与えた。
天が与えた水は、恵みと共に力を与えた。
恵みが生命を生み、力が文明を興した。

それが、この世界の始まり。"



"天の使いが与えた恵みで暮らす民。
しかし、民はより大きな力を欲してしまった。

大いなる力を求める民に、天使は大いなる恵みを与える。
かつてのように、水という形で。

それが、この世界の終わり。"




"星の記憶"を起動した後、洞穴の奥に現れた遺跡。

其処で見つかる箱の中身は、何らかの記録の数々。

碑文の内容を考えれば、恐らく……嘗て此の<世界>に存在した"レムリア"なる文明に関するもの、なのでしょう。



全てを読めた訳では有りませんが……

恐らく"レムリア"は、1人の民の選択・・によって、終焉を迎えた。

そして其の方法は――"世界との境界"を無理矢理に壊し、抉じ開け、逃れようの無い大海嘯を起こすというもの。




其の結果、壊された"境界"は其の儘、修復の手段は無く。

其れ故――私達の様に、何らかの切欠により此の<世界>に遭難する"神隠し"に遭う者が後を絶たない。

そういう事、なのでしょう――







『研鑽重ね究めた我が術が果ては、やがて海とひとつとなり、多くのものを蓄えるであろう。
 外海の糧を飲み、富める海へと成った暁を我が見ることは叶わぬが、我は既に満たされた。

 沈みゆく我が故郷レムリア、この碑に刻み記し、かの海へと遺さん。

 遍くを作りし五つの元素、晶の奇跡にて星となりて。
 新たなる星の記憶を書に記せしとき、扉は開かれる。


 どうか、意志なる晶を手にこの碑文を読む者が現れんことを祈る。』



"その海は数多の術者が挑み、そして敗れた海だ。
土地はなく、ただ広大な海だけが広がる、乏しく虚しい世界。
それを変えんと有力者が集い、そして皆等しく匙を投げた。

神秘、魔法、科学、奇跡……
遍く術の混ざりあったその海は、いつからか自我に近しいものを得ていた。

やがて、とある術者が世界の境界を開いた。
隔絶された世界の境界がこじ開けられたことで、その世界は瞬く間に歪んでいった。
術者の成果を蓄えた膨大な海は、その境界を我が物としたのだ。

他世界の海を取り込み、資源を溜め込んでは海を吐き出し、再び取り込む。
海は、いつからか貪欲なる海と化していた。

そして長い年月を経て。
かの海は多くの資源を蓄え、そして誰かに奪われる日々。

そんな『魔の海』は、今日も晴天の元に佇んでいる。"







"術式を起動し、世界との隔壁を壊した。
亀裂が水平線を走り、海のかさが目に見えて増えていく。
実験は成功した。

これで全ての因果は終わる。
かつての遺産に縋って権威を争う、醜悪な人間どもの文明が。

海に埋もれて終わったはずのこの世界は、異なる海と繋がり、再び終わりを迎えるだろう。
これでいい。オレの役目は果たした。

海開きだ。"