『約束』
「…兄さんの気持ちはわかった。
でも、約束してほしいことがあるの───」
「絶対に、私を忘れないでほしい」
「他の誰かには忘れられてもいい。
でも、兄さんにだけは忘れられたくない」
「兄さんにとっての私がそうでなくても、
私にとっての兄さんは、私のすべてだから…」
「…生まれた時から一緒にいる相手に忘れられるのは、つらい。
そうなったらきっと、何で生きてきたのかもわからなくなる
…」
そこまで聞いた彼は、優しい手付きで私の頭を撫でた。
『あぁ、約束しよう。忘れない』
『…そうだ、僕の楽器を預けるよ。
その代わり、君の楽器を僕に貸してくれ。
お互いの物があればきっと、いつだって忘れずにいられるさ』
『…心配しなくても大丈夫。
いつか必ず、×××××の元へ帰るから……』
───それが、彼と私が交わした最後の約束だった。
その数日後に彼は旅立って、
私は一人、自分達の住処に残った。
時折来る連絡を、心待ちにしながら。