Eno.1073 府高木 西三の日記

優しい……

 色々考えた結果、全部持って帰るのは諦める事にした。いやだって無理だし。
 それにこの世界の固有種、人工的に作られた植物や調整された動物を持って帰っても、騒動のタネになるだけで大変な事になるんじゃね? と思ったのもある。
 そりゃそうだよな。異世界人すら強硬手段をちらつかせてくるあいつらが、こっちにそんな「配慮」をする訳がない。最悪、それこそ力づくで全部持ってかれる。
 ならいっそ見た目では分かりにくい、記録と海水だけに焦点を絞るべきだ。
 ……ま、仮の姿とはいえ大精霊が手ずから作って渡してくれたこのナイフは絶対に渡さないし持って帰るし、何なら親父と兄貴に掛け合って俺が生涯使い続けた後で家宝にしてもらうが。

 と、思ったんだが。

 ドラゴンのねーさんは何か渡しそうにこっち見てるし、白虎の元気っ子が作った車輪を使っていいよって言ってくれた。
 優しいんだが……優しいんだが……?
 即答で快諾とかほんと優しさが染みる……。

 これは頑張りどころ、と思って、とりあえず材料の倉庫を作った。
 他の素材は、実はさっき、船を見に行くついでに砂浜を探したから、揃ってたりする。
 ……俺より年上の筈だが幼い印象の彼とは入れ違いになった。だから、何をしてたのかは知らないぞ。
 それはそれとして、ちょっと数が足りないんだよなぁ……人数分揃うかどうかはかなり怪し……

 ……ダメ元で書き置きに書いておくか


俺の世界の事
 を、アリアンロッド……様かな、格的に……に話した。
 特に隠してなかったから、聞こうと思えば聞けるだろう。
 まぁ思い出してるのは本当だし、記録が欲しいって言った時点でその理由を聞かれるのは分かってたしな。
 後思い出せないのは固有名詞だ。とはいえそれが分かんなきゃ、この透明人間状態も解除できないんだが。

 しかし、自分で説明しても相当に終わってるよな、俺の世界……。
 いやまぁ本気で滅んだとか、先細りで終わりを引き延ばしてるとか、そういう訳ではない分だけまだ平和なのかも知れないが。
 一応、大半の文化や歴史は残ってるし。平和なところは平和だし。
 食い物の種類が多くて美味いのは、そう。間違いない。
 ……これは俺のとこの国だけか?

 実際、自力で異世界を移動できるのなら、観光は歓迎だ。
 むしろ勝手に動き回られるよりも、こっちに連絡を入れて色々手を回させてもらった方が、後始末と周囲のアレ的に楽まである。
 異世界との行き来の方法、なんてものは無いから、こっちから呼んだり、あるいは送り返す事は出来ないんだが。

 ……せめて、元の世界に送り返す事ぐらいは出来るようになっておくべきだよなぁ。
 俺の世界でだって、もういつ「異世界からの迷子」が来てもおかしくないんだし……。