Eno.7 禍津神陽 セトの日記

25.無題

お船に荷物を積み込んでいるよ〜。

お船へ乗るものたちの他 救難船を頼るという オーちゃんとるいちゃんまで 手伝って下さるので この身体でも 物凄く辛い 助けて欲しい などということは無かった。頼り甲斐ある ものである。
いやあ しかし 一度休憩。
まだまだ 積み込むものはあろうが 急ぐことはあるまいよ。この島の沈む時迄 もう暫く時間があるのだから。理由なく急ぐと ろくな事がない。何事も 余裕を持って 進めておくべきである。俺たちは知っている。賢いので。


砂浜は 現在 人の出入りが激しい。
落ち着かないので 休憩がてら トトと岩場へ座り込んでいたら 共にお船へ乗り込む空ちゃんが我々を探していたようである。気分転換には なったし 新しい 仕事があるなら 取り掛かろうとも 思ったが どうやらそうでは無いようだった。

空ちゃんは 仲良しさんのトトへ お土産を用意していたのだ!俺たちは とても嬉しいと思っている。とても。トトが 人間ちゃんと 仲良くしているのが 嬉しかった。愛想笑いでは無い 真に喜ばしそうに 顔を綻ばせるトト。お土産を渡せて 照れ臭そうでも 嬉しそうでもある空ちゃん。俺たちはしかと見届けました。
受け渡しが終わり さあ目出度し。
俺たちが 美しいふたりの雰囲気へ 気を使って海を見ていた時 空ちゃんは 俺たちにも 声を掛け 与えてくれた。俺たちのためにも 思い出を。お守りを。嬉しい。嬉しかった。俺たちは 嬉しかった。確かに嬉しかったのだ。
しかし 俺たちはこれを形容出来ない。

けれど 忘れない。
俺たちは 命ある限り お前のことを忘れない。
こんな吠え声でしか 俺たちは鳴けないが。

拠点より 空に煌めく粒が 散って行くのが見えた。
花火とも違う ひとすじではない 無数の煌めきである。それを見上げながら 俺たちは三人で 手を繋いで帰ったのだ。



俺たちは知っているとも。
俺たちは もう 会えないのだろう。

俺たちのところに 喋るカニや兎は居ない。

何より。
日本人が この俺たちセトを知らぬなど 到底有り得ぬ。俺たちの使う言語を 理解出来るのも 甚だ可笑しい。
こいつらは 嘘をついている。
日本が所有している 禍津神陽を 俺たちがどうしたか。忘れたならば 俺たちが手ずから 思い出させてやろう。お前たちの身に直接。最初こそ そう 思ったが すぐに改めた。
俺たちは 違うところから来たのだな。

危うく無用な争いを起こす所だった。
必要の無い諍いは したくない。加害されるのなら それを返すし。撫でて頂けるなら 俺たちはそれを返そう。俺たちは 対価の獣である。必要だったので 俺たちからも 歩み寄りこそしたが。その先は お前たちの行いが 跳ね返ったに過ぎない。
お前たちは 俺たちが 好きだろう。
知ってい俺たちもである。



トトを手放した時と 似ている。
どうしようもなく 腹の奥が 落ち着かない。

そうか。俺たちナナは 今悲しいのだな。
ならば。俺たちセトも 今悲しいという事だな。

俺たちは 悲しい