Eno.860 水上 椿の日記

にばんめマインド

「ツバキちゃんって、"あの"水上咲良の妹なんだ」


わたしの人生は、いつだって目の前に届かない壁がある。そういうものだった。
物心ついたころには挫折して、だからこそ別に、それがどうってわけじゃなかったけど。

同情も、憐みも、共感も、面白がりも、いつもわたしの傍にあった。
全部、全部、全部、全部、別に要らなかった。

だからこそ、わたしは立派に育ててしまった。はねっかえりで負けず嫌い。
絶対負けない、止まらない。落ち込むとこなんて自分にも見せてやんない。
生まれついての足跡辿りだったわたし曰くの、「にばんめマインド」を。

「すっご~~いメチャクチャ海と空~!!
え、なになに?コレってマジの島?」

「わ~!ホンモノの人魚さんなんだ!
 なんかカワイイかも~……。
 そしたらタライみたいなのがあったらいいのカモ、だね!」

「オオカミ様、無事〜!?
 飛ばされない風の強さになったから、
 約束、果たしに来たよ〜!」



じっとできない、黙ってられない。なんでも首を突っ込んじゃう。
やるぞって思ったことはぜったいにやる。だってそれこそがわたしだから。
もう踏んである轍を追っかけるからには、ノンストップの全力疾走じゃなきゃ、しょ~がない!

「……わたし、みんなが考えるものを見てみたいのかも」



だから、その成果も結果も。ほんとは振り返るのって、ほんとに怖いんだけど。

仄かな光が空へと浮かび――そして、煌めきを振り撒いた。



今は振り向いて見上げれば、煌めきがわたしたちを見下ろしている。
輝くような生活の輪郭と軌跡が、ちゃんとそこに存在している。

「……けっこう、わたし。うまくやったと思わない?
 だって、こんな眩しくて……ちょ~楽しかったよ!」

「みんなもそう思っててくれたらいいけどなぁ」


「……なあ、星も兄ぃも見てるか?
 にばんめっ子だって、けっこ~……やってやったぞ!」



みんなが残すっていう、島への想いが。こんな風に眩しくて良かったな。
いつ振り返っても、あったかい思い出になってくれると思うから!

さて、振り返りの時間は終わり。
まだまだ、帰るまでがわたしの走る道なんだから!