Eno.887 ノルンの日記

Seven Days.

ある日目覚めた俺を迎えたのは、波の音と人影だった。


始めましてこんにちは、からの自己紹介。
ヴァンパイアロードのルクス、天使のカノ、冒険者のゼイル。
…改めて並べてみると、とんでもない肩書のオンパレード。

吸血鬼はまだしも、天使や冒険者なんて物語でしか聞いた事がない。
…って思ったら、ホントに物語から来てるらしい。世界って広いんだなー。

面白可笑しく笑って、キメる時はキメる、最高の奴等。
俺のよく知る"異種の壁"は此処にはない。




特記事項。久しぶりに腹が減った。し、喉も乾いた。
文字が読めて、物に触れて、自分の"足"で道を歩けた。
暑くて寒くて足を滑らせて、何なら石も木も景気良くぶつかって。
嵐の中でボロボロになって、面白すぎて笑いながら走り回ったりもした。

氷室で涼んで、風呂で暖まって、屋根と壁のある場所で横になって。
同じ場所に居た奴等と、何となくで言葉を交わして、時間を潰して。
まるで、生きているみたいだった。






ただ、やっぱり俺には向いてなかったみたいだ。
気を抜いた一瞬で どん と疲労が来て、それで終わり。


生者の真似した七日間。
死者の"生"は、生者のそれには程遠い。







…残されたらくがき帳に、誰かの文字がある

ルクスは、嵐の日に苦しんだんだと。
家族を失った悲しみも、嵐の恐怖も俺には分からねーけど。
揶揄った俺を睨んだ視線と、最後の態度が答えなんだろうな。

カノは、海が大好きな家出中の天使だと。
何とか繋がってる天界がどうなるかは知らねーけど。
自分を愛して、誰かを愛して生きていけるのは良い事なのかもな。

ゼイルは、海の街生まれの酒好き冒険者だと。
行く先々で、俺の知らない危険な仕事もするんだろうけど。
仲間と恋人とアンタの前向きな姿勢があれば、何も怖くねーのかもな。


願わくば、アンタ達の未来が幸せなものとなりますように!


           Norn = Laughhallo























死への興味は確かにあった。
恐れる様なものじゃないと思っていた。

生を望むのと等しく、死を望んだこの身。
いつかの昔は生きていたかったのかもしれないけれど。



今や全て他人事になりつつある。



記憶が消えて、関心が薄れていく。
今更何かを嘆く程、自分を憐れむ気持ちもない。
今更真面目に語らう程、誰かを愛する気持ちもない。

ただ、"刺激が欲しい"と思う。
ふと、これが悪霊が生まれる理由なんだろうなと気付いた。




思い出の日々を"幸せ"と指すのなら。
それを失った俺は"不幸"なのだろう。

あの日分けた林檎と、あの日溺れた荒波と。
記憶に色濃く残る二色は、終ぞ手に残せなかったのだから。




…願わくば、此処での日々が俺の記憶に残り心残りになりませんように。