Eno.937 吟遊詩人の日記

勇者一行

 
ヒトに紛れて面白いことを探し、一人の吟遊詩人としてライアーを弾き語って。

けれど疲れてしまうから、すぐに森に引きこもる。

時々装飾品を作って、それを売り。

またヒトを眺めるために都に留まっては、すぐに森へ帰っていく。



…そんな代わり映えのしない日々を過ごす中。
とある勇者が、魔王を討つための旅に出ると聞いた。


正直、あまり興味はなかった。
今までの勇者一行の惨状を知っていたから。
どうせ今回も 勇者は生きて帰って来ないんだろう…と、それくらいに思っていた。

それでもまぁ、一応ネタにはなるだろうと考え、一目だけ見ておくことを決める。
王都へ向かい、はじめは遠巻きに、気付かれないよう…集う人々に紛れて観察を───


「(…なんだ、まだ子供じゃないか)」



変な感じのする勇者、小さな妖精、子供の神官。
拍子抜けしたというか、期待外れかもしれないというか……


「(あぁ、今回も──

 アイツ神官なんで台座付きの剣背負ってんだ???)」




勇者もだいぶ変な感じはしたが、それ以上に聖剣とおぼしきそれを土台ごと所持する少年に目が行った。


なにあれ……こわ………
近寄らんとこ………………


でもめちゃくちゃ面白そう…


ただなぁ…あまり目立つ立場になりたくはないし、魔王を討つ旅となると長引きそうだし………


(とりあえず、帰るか───)






結果、その日は見物だけして帰った。
後にさらに変わった仲間達を増やした一行と遭遇することになるのだが、それはまた別の話……。