Eno.306 岬カノアの日記

30.それぞれの帰り道

 それぞれの準備を済ませて、一足さきに救助船に乗る人もいれば、ため込みすぎた食料を焼き続ける人もいる。

  ぼくたちの拠点ともさようなら。

 ここの地下にかつての都市がありその上に、また別の村が建てられてまた沈んで逝くのを繰り返しているんだろうなと穏やかすぎる夜空を見ながら思った。
蟹工船でこの海を抜けることにした仲間たちにできることについても忘れずに、ぼくがここにたどり着いたときのように地点を結ぶことができるならたぶんうまくいくような気がして、父さんの研究内容で知っている分を思い起して整理していく。ぼくが完成させることは出来ないかもしれないけど、その試案なら任せてほしい。
そのためにはそうだ、研究所跡の箱を正しい方法で開けてみよう。僕の予想では倉庫にいくつかある漂着船に落ちていた【不思議な石】だ。

 セト兄さんの調理場からずっといい匂いがしている中、僕のスペースも仕込みを済ませ干している間にそれを試す。
 

あっ…。海と同じ色だ。


 それはここに満ち溢れる特異性そのものと言える暗い青色の水晶のような石。
島の道具を駆使して開けて手に入れたメモの内容を一本の線になるように並べて読み直していくと、【見てはいけないものをみたいな】の正体はそういうことだったと分かってしまった。

みんなには内緒にして蟹工船を選んだみんなとお別れする前に、
チャロくんにはヘルメットをかぶらせた、

【アヒルちゃん】


ザガミくんにはカニスーツ仕様の、

【アヒルちゃん】


ミアちゃんには島の花のポプリを。

一番お世話になったオー姉さんの姿はもうなくて、そっくりな帽子をかぶせた

【アヒルガイドちゃん】


は手元に残ったまま。

 お返しとしてミアちゃんから木彫りの小鳥をもらった。これは彼女にとっても嬉しい出来事になったかも、ぼくの知らない未来の世界から来たなら。

 そうして、残っているみんなに【鏡寒天】と【オムライス】を切り分けて振る舞ってこの海に消えていった人たちを偲びながら選んだ船へ、
水路として整備した道以外はほとんど沈んだ道を走っていった。


 ぼくが選んだ方には、

「5人目ですね。珍しいな、5人もこっちを選んだのは。
自分たちの船と我々なら、前者を選ぶケースが多いんですよ。お部屋はこちらです。」



案内された船室に向かう途中、シシ刑事さん、オー姉さん、グレーさんにアイラくんとすれ違った。共有スペースで会うことがあればちょっとだけお話しようかな。
他には乗組員たちが航路について立ち話をしていて、ここから帰れると確信できた。
話をする人々の中に見覚えのある人が、

「あっ、カノアくん。無事だったんだね。」



 父さんの研究仲間が探しに来てくれていた。自宅があった場所で確認した兆候を元にアクセスを試みて調査隊の船を寄港させることに成功したとのことで、今後の対策を練るため現地視察を行うためだそうだ。

船室の柔らかいベットの上で、ぼくも今後どうするか考えよう。