Eno.91 シィリヤーレルの日記

【9 そして船は】


 船が完成し、星の記憶を見た。
 迫る海面に、
 もう時間はないのだと悟った。

 あぁ 最初は戸惑ったけれど。
 楽しかったな、楽しかったよ。
 僕はこの日々を、忘れない。

 心を溶かしてくれたセツカ。
 名前を思い出させてくれたエルディス。
 逃げても良いと背中を押してくれたブレイバー。
 頑張ったねと労ってくれたフィルマ。
 オルドの優しい陽だまりにも、救われた。

「──ありがとう!」


 みんなことが、大好きだよ。

  ◇

 セツカに、僕を拐って欲しいと頼んだ。
 セツカはそれを了承してくれた。

 僕らはこれから、セツカの場所へ行く。
 あんな国なんて民なんて見捨てて、
 自由に生きて羽ばたいてやるんだから。

 ごめんなさいお父様。
 貴方の望み通りにはなれないけれど。
 貴方の定めた道の上、僕の幸せはなかったみたいだ。

 嘘に塗れたこの人生だけど。
 僕は自分を善とは言えないけれど。
 これからやり直せるかな。
 やり直せるよね、きっと。

 未来への希望を信じよう。
 この船の行く先が、
 明るい未来であると信じよう。

 そして島は沈み、船は発つのだ。