【9 そして船は】
船が完成し、星の記憶を見た。
迫る海面に、
もう時間はないのだと悟った。
あぁ 最初は戸惑ったけれど。
楽しかったな、楽しかったよ。
僕はこの日々を、忘れない。
心を溶かしてくれたセツカ。
名前を思い出させてくれたエルディス。
逃げても良いと背中を押してくれたブレイバー。
頑張ったねと労ってくれたフィルマ。
オルドの優しい陽だまりにも、救われた。

「──ありがとう!」
みんなことが、大好きだよ。
◇
セツカに、僕を拐って欲しいと頼んだ。
セツカはそれを了承してくれた。
僕らはこれから、セツカの場所へ行く。
あんな国なんて民なんて見捨てて、
自由に生きて羽ばたいてやるんだから。
ごめんなさいお父様。
貴方の望み通りにはなれないけれど。
貴方の定めた道の上、僕の幸せはなかったみたいだ。
嘘に塗れたこの人生だけど。
僕は自分を善とは言えないけれど。
これからやり直せるかな。
やり直せるよね、きっと。
未来への希望を信じよう。
この船の行く先が、
明るい未来であると信じよう。
そして島は沈み、船は発つのだ。