Eno.600 アルノー・シュヴァリエの日記

ジャン・シュヴァリエ

人体実験という名の、終わりのない苦痛の時間が続く。





死にたくない……涙が溢れそうになる。



俺は、
孤児を理由に幼い頃から訓練すらないまま戦場に繰り出され、
死の恐怖に怯えながら戦い続け、ふと神の声が聞こえるようになって、

長年の戦争の果てに、

私は都市国家オルリアを救った「オルリアの救世主」と呼ばれるようになった。


その後、修行と称して、巡礼の旅に出て、
途中で船が難破する事故が起こりながらも、
それを乗り越え、旅を再開できた。



しかし、その数カ月後。
突然、オルリアの使者より「オルリアの聖王より戻るように」と故郷に連れ戻され、

そして国家の金の横領、強姦、暴力、国家転覆、覚えのない犯罪であれやこれやでこの様だ。



なんでだ?
なんで?
なんで、なんで、なんで!?

何が悪かった!?
ただ祈り、ただオルリアの幸せを願い、戦ってきただけなのに!

なのに……なぜ、こんな目に遭うんだ!?

憎い。
憎くて、憎くてたまらない。
何一つ悪いことなんてしていないのに……!


耳に入るのは、楽しむかのように私の苦痛を笑う者たちの声。


それに混じり、どこかから、遠く悲しみに満ちた声が聞こえた。


私の名を呼ぶその声――神の声かもしれない。


いや、でも……その声は、まるで……



――あの、空を舞う美しい鳥の声を思い出させた


彼は「ただ空を飛ぶだけの鳥」だった。

彼は「真っ直ぐで、清らかで、人を笑顔にするのが好きな鳥」だった。

彼は「人の苦しみを悲しみ、人を愛し、平和を愛し、世界を愛した鳥」だった。

彼は「どんな檻にも似合わない、自由な鳥」だった。



彼は「世界一美しい、俺だけの小鳥」だった。


俺の小鳥、だから、名前足枷をあげた。


同じシュヴァリエ俺の俺の俺の俺の俺の俺の俺のの名前を。



……もう一度、会いたかった。

欲しがったからバチが当たったんだ。



もう二度と会えないんだろう。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

――そうだ、彼に、祈り呪いを。

彼がこれから旅する世界に、幸せがあらんことを不幸が訪れることを……。


アルノー・シュヴァリエが誰からも愛される幸福の鳥忘れられる災厄の鳥であることを。







アルノー、ここでお別れだ。ごめんな愛してる










意識が飛ぶ直前、ふと浮かんだのは、

数ヶ月前に小さな島で見た、異国の衣装に身を包んだ4人の男女。


あの時、楽しかったなぁ。



未熟だけど、もっと、話したかった、

修行中の聖職者だけど、頼りたかった、

思い出、もっと作りたかった、




聖職者として、未練を抱いてはいけないはずなのに……





修行が足りなかったな。


……死ぬにはまだ、いっぱい、未練だらけじゃないか。





………アルノー、

もし、無人島で漂流して、誰かと、生活する、なんてピンポイントな時が来たら、

俺のやりたかったこと、

俺の代わりに、全部やって、楽しんで、俺の次に大事な友達を作って、また旅をしてほしい。

それが俺が出来なかった、やりたかったこと呪いの解除