未来
島で、皆と楽しく過ごした。
たくさんのすてきな思い出。
きっと、これはかけがえのないもの。
元居た場所に帰ったなら、
だいすきな家族たちに、だいすきなパパに、
今回のことを話そう。
たくさん、たくさん、話すことがある。
形のない思い出をいっぱい胸にかかえて。
元居た場所に、戻ったなら。
向けられるのは好奇の目、インタビューのマイク。
「一体なにがあったのですか」
それを知っているのは、このこどもだけだから。
思い出せなかったこと、は。
テントの裏まで来て僕の体を触ろうとしたのが、
すごくえらいひとだったこと。
そのひとが、檻の中の弟たちにすごく吠えられて……
あのサーカスは危険だって、そう言ったから。
サーカスを、やめなければならなくなったこと。
動物たちを、大切な家族を。パパと僕で、毒のえさで──
パパが、こんなに泣いているのを初めて見た。
僕もたくさん泣いて、泣いて、それから。
パパがくれたジュースを飲んで……
目が覚めたとき、パパと僕が乗った車が、
崖のさきの海へ直進しているところだった。
僕はとてもとてもねむたくて、もういちど、目を閉じた。
生きてさえいれば。
きっと、生きてさえいれば、良いコトがあるんだって。
僕にジュースを渡しながら、パパはそう言った。
僕の頭を撫でながら、ずっと泣きながら、パパは。
そう言ってくれたのに。
生きてさえ、いれば。
僕は生きている。ひとりぼっちでも、まだ。
みんな……見ていてくれるよね。
パパもママも。弟たちも……
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