【子どもが人魚姫になった所以】
海の底。あの日海底の継ぎ目が揺らいで軽く身動ぎした。
ただそれだけの話。
それだけである島国の海沿い側が大打撃を被ったらしいと陸に放った使い魔から聞いたのだ。
南海トラフ? だとか陸のものは呼ぶようだが、海の底を終の住処とする――修繕屋の魔女にはどうでもよかった。
その日も日課である海の墓場に落ちてきたガラクタの中から面白いものがないか探しに行くと。
陸で死んだ者の手足がぐちゃぐちゃに混ざりあった腐った肉の塊や、なにかの建物……陸の生き物共が懸命に作ったものの残骸が呆れるほどに流れ着いていて。
件の地震と津波で流れ着いたモノの成れの果て。
見回していると、視界の端に不釣り合いな指輪をつけている屍蝋化した子ども腕が映った。
好奇心で引っこ抜いてみれば、肘から先がない。
使い魔の人魚共を使って、その人間だった塊を集めてこさせて。
こういう作業は鼻の良い使い魔に任せるのが確実で速いですから。
集まった欠片はおよそヒトの形を成していなかった。手足は引っこ抜けて、胴体は2つにひしゃげて。頭が転がっている。
よくよくある死体だ。修繕屋の魔女にとっては。
「この小娘の頭の骨は存外好みかもしれないねえ」
その水死体を気に入った魔女は自身の腕を振るいその死体にかりそめの生命を吹き込みました。
そげてしまった肉の代わり
に、寿命の尽きた人魚の肉と入れ替え1つずつ丁寧に繋いで縫い合わせ――人魚の血肉で1人の子どもの骨の上に被せ短い生命のお人形さんを作り上げたのです。
魚に食われた目玉には似合うガラスの目玉をはめ、抜け落ちた髪は色鮮やかな人魚の髪を使って。
あとは己の死すら理解できずに津波の日に囚われたままの子どもの魂を入れてやるだけ。
全ては上手くいきました。水死体は意志を思い出し、自ら動き喋り出しました。
火のつくような鳴き声を上げ――
「死にたくない。死にたくない。帰りたい。パパとママの所へ帰りたい。生きていたい!」
と五月蝿く泣きわめくだけの水死体に修繕屋の魔女は急速にソレに興味を無くして。
とっとこのゴミを捨てることにしました。
五月蝿い子供の声を綺麗に装飾されたナイフに閉じ込め、1つ呪いをかけました。
「お前のような水死体の生命はあと7日。生命が尽きるまでに、そのナイフで誰かを殺めて生命をすすって奪い取れ。
そうすればお前の生命は蘇り、その望みは叶うだろう。
果たせなければ血肉は泡となってはぜて消え元の白骨死体に戻る」
そのおまじないを受けたナイフをゴミの水死体に握らせ。
他のゴミと一緒に、別の場所へ島流しにしました。
魔女は機嫌が良くなり、もうその死体の事など忘却の彼方へ。
そして水死体の子どもはあの島へ――
流れついて2度目の短い生命を終えたのです。
ただそれだけの話。
それだけである島国の海沿い側が大打撃を被ったらしいと陸に放った使い魔から聞いたのだ。
南海トラフ? だとか陸のものは呼ぶようだが、海の底を終の住処とする――修繕屋の魔女にはどうでもよかった。
その日も日課である海の墓場に落ちてきたガラクタの中から面白いものがないか探しに行くと。
陸で死んだ者の手足がぐちゃぐちゃに混ざりあった腐った肉の塊や、なにかの建物……陸の生き物共が懸命に作ったものの残骸が呆れるほどに流れ着いていて。
件の地震と津波で流れ着いたモノの成れの果て。
見回していると、視界の端に不釣り合いな指輪をつけている屍蝋化した子ども腕が映った。
好奇心で引っこ抜いてみれば、肘から先がない。
使い魔の人魚共を使って、その人間だった塊を集めてこさせて。
こういう作業は鼻の良い使い魔に任せるのが確実で速いですから。
集まった欠片はおよそヒトの形を成していなかった。手足は引っこ抜けて、胴体は2つにひしゃげて。頭が転がっている。
よくよくある死体だ。修繕屋の魔女にとっては。
「この小娘の頭の骨は存外好みかもしれないねえ」
その水死体を気に入った魔女は自身の腕を振るいその死体にかりそめの生命を吹き込みました。
そげてしまった肉の代わり
に、寿命の尽きた人魚の肉と入れ替え1つずつ丁寧に繋いで縫い合わせ――人魚の血肉で1人の子どもの骨の上に被せ短い生命のお人形さんを作り上げたのです。
魚に食われた目玉には似合うガラスの目玉をはめ、抜け落ちた髪は色鮮やかな人魚の髪を使って。
あとは己の死すら理解できずに津波の日に囚われたままの子どもの魂を入れてやるだけ。
全ては上手くいきました。水死体は意志を思い出し、自ら動き喋り出しました。
火のつくような鳴き声を上げ――
「死にたくない。死にたくない。帰りたい。パパとママの所へ帰りたい。生きていたい!」
と五月蝿く泣きわめくだけの水死体に修繕屋の魔女は急速にソレに興味を無くして。
とっとこのゴミを捨てることにしました。
五月蝿い子供の声を綺麗に装飾されたナイフに閉じ込め、1つ呪いをかけました。
「お前のような水死体の生命はあと7日。生命が尽きるまでに、そのナイフで誰かを殺めて生命をすすって奪い取れ。
そうすればお前の生命は蘇り、その望みは叶うだろう。
果たせなければ血肉は泡となってはぜて消え元の白骨死体に戻る」
そのおまじないを受けたナイフをゴミの水死体に握らせ。
他のゴミと一緒に、別の場所へ島流しにしました。
魔女は機嫌が良くなり、もうその死体の事など忘却の彼方へ。
そして水死体の子どもはあの島へ――
流れついて2度目の短い生命を終えたのです。