Eno.1034 スピスタの日記

ハーフエルフが勇者PTに入る理由

魔王軍から勇者のPTに参加する者は、決して多くない。
それは敵愾心からというよりも、魔王への忠誠心や魔王軍での役割が理由だろう。
けれど、そんな中ハーフエルフは勇者PTで力を振るうことを選んだ。


大した理由があるわけじゃない。
ただ、戦いが終わった後のことが、少しだけ、不安だったのだ。
戦う力もなく、一般的には魔族でさえない自分の、唯一の特技さえ必要とされなくなった、その先が。


魔王はハーフエルフを、決して冷遇することは無いだろう。
魔王の娘も、側近も、四天王も、共に戦った魔王軍の戦友も。
それどころか、戦うことに長けていた魔族よりむしろ、生きやすいかもしれない。
それでも、
自分は不要なのだと、そう自分自身で感じてしまうことが、恐ろしかった。


ならば、人間やエルフの世界に戻ってはどうか?
特別な力など必要ない世界へ、平凡であることが愚とされない世界へ。
……きっと、それも難しい。
故郷を捨てたハーフエルフが、今更、あんな世界に戻ることなんて、出来るはずもない。


それが我儘だってことは、自分でも分かっていたけれど、ハーフエルフは自分自身を好きでいたかった。
それはきっと、勇者PTに入ることを決めた理由の一つだっただろう。