Eno.691 明日の分霊の日記

昨日


「素敵なキミ」
無条件に微笑んでくれた

「オルド!」
海を渡る勇敢な背中はとても頼りになる

「オルド」
善いことをまっすぐに信じている。

「オルド殿」
手のかかる、素直な子。

「オルドくん」
森の奥の、エレガントな妖精さん

「おるど!」
ニコニコとかわいいスライムちゃん。

「にゃお。」
迷い込んだ……とても勇ましいねこちゃん

「……オルド。」
氷の奥にいるとっても優しい嘘つきさん。

縋る心配が無かった。
拒む理由が無かった。
だって彼らは渡せば渡す程、同じ程の温かさで返してくれる。
満たされるのが心でわかる。
心の望むままに世話をして、心配をして。
それが許されて、喜ばれるだなんて!

だと言うに、まるで空を切るような手。なにか大きな間違いを自覚しながら、それがなにかに気づけなかった。

(…………己の正体を忘れる。ボクは最初の一手を、致命的に間違えていた。)

ずっと不安が除けなかった。
ずっと心配で心配でたまらなかった。

(そりゃそうだ、自分はきっかけ次第で記憶を失うんどから。)

ここですごした彼等との記憶も含めて、全部全部………でも、その日を送るオルドは知らない。だって忘れてしまったのだから。
当然、記憶を失うトリガーだって、何一つ!

だからあの痛みは、自分への失望は、自業自得だった。
ああ、ぼくのバカ、ぼくのバカ。ごめんなさい、ごめんなさい…………

「……少なくとも。
私の見ていたオルドは、
幸せそうに見えていたよ」


蔦模様が涙を拾い上げた。
それが昨日。