Eno.1014 漢升の日記

アッティラ族の階級について:特別編

自爆兵ボマー囮兵サプライ
アッティラ族の最大の特徴にして覇権を握るに至った専用の階級です。成体になりたてで外骨格が固まっていないワーカーの素嚢に限界まで中身を詰め、そのまま外骨格が固まるまで待つことで分化します。この時、直径5mの球体になります。
群れの中で輜重兵として働き、獲物の体液や清潔な水、蜜、油などを蓄えています。これは飢餓が発生した場合に引き出されます。溜め込んでいる間に死なれても困りますから、なるべく若い個体がこの役割に選ばれます。
限度一杯まで溜め込むと動けなくなりますが、直径が全長の3倍までなら、普通のアリの姿勢になり、腹部を上に向けた姿勢でなら移動ができるようになります。自爆兵はこの状態です。

自爆兵として働くのに幾つかのプロセスを経ます。まず、溜め込むものは脂肪分を分解することで得るアセトンです。引火性の液体であるこれは、もう一段階の分解でグルコース(糖)になるので、生体内でも普通に生成されるものです。
自爆攻撃を敢行する、となった場合、これに、普段は殺菌や保存に用いている胃液と過酸化水素を混ぜ合わせます。

これによって、爆発物である過酸化アセトンを精製するのです。過酸化アセトンは衝撃、熱、炎などで容易に爆発する過敏な代物ゆえ、直前に合成する形です。その際には特有のフルーティな香りが漂います。

一度こうして自爆の準備をすると、生成物は固体ですから素嚢が固体で詰まって死ぬ運命にあります。誤爆も多くリスクも大変高い代物ですが、密封された腹部の中で点火された爆薬は外骨格の破片と共に強力な爆轟を伴います。遥かに強大な敵を打ち倒し、時には敵対部族の巣を崩落させ、とアッティラ族の力の象徴となりました。甘い香りに誘われてドラゴンが丸呑みにし、内側から弾け飛んだ逸話は有名です。

しかしこの通り自爆兵の運用は高いコストとリスクを伴いますし、よく知られているために戦では腹が膨らんだ個体が狙われます。このため、近年では同じ色の別の液体を詰めた“囮兵”である場合が殆どです。囮の場合も輜重兵として働きますから、無駄がありません。

手の内を知られているからこそ恐怖の象徴であり、抑止力として働くことを彼らはよく知っています。

「拙者は飛行能力が高いゆえ、自縛兵を抱えたまま飛んでいって上空から落とす……爆撃が可能でござる」


「とはいえ余りにもリスクが大きいので、普段はやらないでござるな。自縛兵より拙者の方が代えが利かない自覚があるゆえ」