Eno.691 明日の分霊の日記

今日

目が覚めて、まず知ったのが後悔だった。
そばに居るはじめましての人達は、皆ボクを知っている人たちだった。
記憶を失ったと驚かれ、心配され、しかし気にしないと声を交わしてくれた。

どういうこと。
ボクがみんなに優しく下から、みんなも僕に優しくしてくれる。
何かを忘れている。きっと、大切にしたかった何か。

(………自業自得が回り回って、毒になった。)

そうして不貞腐れて、一人ブラブラと歩き回った。
モヤモヤする。曇天に押しつぶされそうだった。

「良いも悪いも生きている世界で変わるものだよ。」

その時になって、初めて理解した。
羨ましかったんだ。目覚めた時。ボクじゃないボクの影が目の前にいる人達の側いるのが嫌だった。恐ろしさでもなんでもなく、ただ純粋な嫌悪感があった。
その気持ちを払拭できたのは、結局変わらずボクを呼んでくれたみんなのおかげで。
何度でも名乗ると言ってくれた彼女の、今度は忘れないでと言ってくれた彼女の、背を押してくれた彼の、慰めてくれた彼の、信じてくれたきみのおかげで。

………だと言うに、昨日のボクへの妬ましさばかりが心を占めた。ほんとう、身勝手な事だ。
もう一度会いたかった。忘れてしまったその心を知りたかった。
陽だまりのようと言われた、ボクが振りまけた温かい何かとはなんだったのかを知りたかった。

だから、帰れないことを覚悟で挑んだ。
記憶の復元、失ったものの再構築。
足らないものはこの海の魔力で補って。

その最後に、みんなの前から立ち去った。

それが今日