Eno.998 《蛇神様》ノイの日記

蛇の独白58

元の世界に帰った時、村が無くなっていたらどうするか……。
まず、そうなってない事を祈るばかりだが。
万が一無くなっていたとしても、村人たちだけでも生きていてほしい。

もうすぐ、帰るからな。




……。
ふと、そうだと思い出した。

何かの間違いで天気が良くなる事を期待して、疼く身体を押して外へ出掛けた、もうひとつの理由。
出掛けなければならなかった、とまでは切羽詰まっていなかったが、散歩ついでに成そうと思った事。

辺鄙な村が辺鄙でなくなるように。
しかと存在している事を、世界に知ってもらうために。
そして我自身が、散歩に天候をあまり選ばないようにするために。

あの日、外に出たのだった。

その結果台風と大洪水に巻き込まれた果てに遭難してしまったのだが……。

村人たちが「今日は何か良くない予感がする」と一度だけでも止めたのは、偶然にもこの事を予知できたからやもしれぬな。
過去むかしの性分のせいで大人しく従わず、無理に出て行ってしまった事を、再会できたらまずは謝らねばなるまい。

……とはいえ、そのおかげで、異世界の漂着者たちに会えた事も確かだ。
もう二度と巡り会う事が叶わぬやもしれぬから、最後くらい全員の名前を覚えたいところだ。

まぁ、いつかもう一度でも巡り会いたい気持ちの方が強いがな。