Eno.1060 居住作製ゴーレム-TKM01の日記

一方未来の頃

『――!』
「どうなされました?」
『帰ってきたわ……!』

こうして回収された試作型先行探索居住作製ゴーレム-TKM_Ver0.1はマスターと、その旦那様に迎えられ。
ソリ一杯に積まれたお土産と共に、不思議なシマで起こった出来事のログを取り出されました。
そのログの内容を2人は興味深く精査していましたが、最終的には口外しないことに決定しました。
この世界は異世界についての知識はもちろん、異世界にわたる方法も産み出されてはいますが――なにせ、マスターの父親である魔王が召喚獣としてあらゆる世界に出張しているのです――むしろ異世界への造詣が深いからこそ、深くかかわることはやめるべきだと判断しました。
なのでお土産としてゴーレムが持ち帰ってきた魔力を含んだ大量の海水は、苦笑いと共に全て然るべき処置をされた上で廃棄され。
同時にゴーレムが嬉々として持ち帰ってきた大量の火薬は、ドン引きと共に然るべき処置をされ同様に破棄されました。ゴーレムは名残惜しんでいましたが、残念ながら当然でした。
金貨や宝石は真っ当なお土産として2人に喜ばれ。
そしてシーグラスは、本来であればこれも破棄すべきものだとは判断されつつもマスターの部屋に飾られることになったのでした。

「ワタシの行動ログが、開発のお役に立つと予測していたのデスガ」
『繰り返しになるけれど、もう開発はほとんど完了しているのよ。それにあなたの過ごした島は……あまりにも特殊な環境で役立ちそうにないの、残念だけど』
「そうデスカ」
自分でそう感情と動作の動きをプログラムした事実はあれど、声と共に残念そうに首をぐんにゃりと曲げるゴーレムに、マスターの獣顔がしゅんとします。
『けれど、あなたのその特殊な環境で他の漂流者と共に生き延びたというのは、なんとか役立てたいわ』
「何に役立てるのデスカ?」
ぐんにゃりと曲がっていたゴーレムの首が起き上がりこぼしのように戻ります。
それは……と何に役立てようか思いついていないマスターは口を濁しますが、横から助け船が入りました。
「はっはっは、ピッタリの職業があるではないか。我が妻よ」
『それは一体……?』
「文字通りの冒険者、あるいは探検家だよ。テレパスが届かない場所でもここまで正確にログを取得できて物品も持ち帰ってこれたのだ。元々未開の地の開拓という目的で開発されていたのだから、前人未到の地の探索や冒険に転用するのも一から組みなおすよりも簡単だろう?」
あるいはそれは文字通り、もとい旦那様の姿通りの悪魔の誘いだったのでしょうか。
そんなわけで試作型先行探索居住作製ゴーレム-TKM_Ver0.1はその役割を終えて、新たに冒険者ゴーレムとして道を踏み均し始めるのでした。

そのゴーレムの活躍は――いずれ、また。

*おしまい*