Eno.716 仮の日記

泡沫:6



「あのものたちは砂浜に上がったやつを珍しいと言った」

「どうかそれを引き取らせてほしいと」

「スクアーマは、お前の父親は、珍しい事例なのだと」

「それから、私たちの生活をこれから先ずっと保証しようと話していた」

「観察し続けて、出た結論だと」

「今まで通りの生活を続けてくれて構わない。足らないところは、私たちが不自由ないように努めよう」

「そう話していたのだ」

「ただし、それは彼と引き換えだと」

「…」

「お前が、いつもよりも早く起きていればなあ」

「目にできたのだろうが…」

村の中で血は濃くなろうと、それは彼らにとって関係がなかった。
魚人は、そとにでられない。
外から人間を待つしかなく。
攫うしかない。
そうでなければ。

このままゆるりと終わっていく。

だから、自分たちの平穏と引き換えた。
死んだ人間は動くまい。



「…………」

「もう、いい」

彼の口からは、それだけが告げられている。