Eno.65 海老原 有一の日記

それでも、

一面に、青色が広がっている。

太陽が水面に反射するたびに、眩暈がするほど眩しい。

海は、
海は広すぎて、ずっと見ていると心が押しつぶされそうだ。
俺が海を見ようとすると、異能が強く働いていたのは、
もしかしてこんな気持ちになってしまうからだったのか。

「……」



俺と風弥は、あの島が沈む7日間を生き延びた、ようだ。
思い返すと、生きるので精いっぱいだったかもしれないな。
でも、それが良かったのかもしれない。
久しぶりに出会ったって言うのに、
そんなお互いを許せる二人で良かったとも思う。

だから、俺はまだ人間らしく生きていけるんだと思ったとき、
そうしようと決めて花火を上げた夜、
自分たちがこれからも生きていけるんだと思ったとき、
心から声を出して、笑えたんだと思う。



船が揺れるたびに、心臓が動くのを強く感じる。
海ごと、身体の全部をかき回されている感じがした。
端的に言えばこれは船酔いだったと思う。


「……」




異能心の殻が働いていないうちに、
かんがえてしまいたいことは、全部考えてしまおうか。

「ご縁を大事にしなさいって言うでしょ」

親友の言葉を思い出す。
俺はこれから、どこに流れ着くんだろう。

望む世界の海へ、この船は連れて行ってくれるとも言っていた。
俺が望む世界は、じゃあどんな所なんだろう。
多くは、やっぱり望む気にはなれない。
俺はそれほど、偉くもないし何かを成し遂げたわけでもない。

せめて、俺と縁のある場所がいい。
俺のことを覚えていてくれている人がいるところがいい。
俺という一人は此処に有ったよ、と知っている人がいる場所。
風弥とまた会える場所なら、そこがいい。
風弥の『願い』を叶えられる場所になるから。

そんな場所が世界のどこにも、もう一つもないんだとしたら、
戻る先は多分決まっているだろうけど。

それでも、
ほんの少しくらいは。
『希望』を持って生きても、
誰も文句は言わないよな?