しあわせな養殖魚
「大変だ!ツキジちゃんが祭りの準備に行ったっきり戻ってこねえぞ!!」
「なんだって!?おい動ける奴は全員網もって海に来い!
動けねえ奴は警察呼んでくれ!」
「頼むよツキジちゃん。どうか無事でいておくれ…。」
─
無人島に漂着して8日…と数日後。やっとわたしはこの村に帰ることができました。
船が停まった港から歩いて3日かかりましたたけどね、えへへ……。

(わたしの大切で特別なアイス。道中の栄養補給って形で
いただくのはちょっともったいなかったです。)

(でも食べているとこれをくれた方のことを思い出せてなんだか幸せな気分になりました。)
村に帰ると冬が近づいているのかあたりはしんと静かです。
しかし街の至る所に一種類の張り紙が貼ってあります。
それは年末に開催するイベントのポスターよりももっと真面目なものでした。
探しています!
ウオヌマ=ツキジ(16歳)
特徴
身長158cm、紺色のミディアムヘア
サイズの大きいパーカー、ピンク色の靴
脚に無数の絆創膏
20××年9月×日以降、行方不明。
どんな情報でもお知らせください。
ユキグレ村村長 ラウス=リンユウ
これって…。
わ、わたし…想像以上に深刻なことをしてしま…
「………ツキジちゃん?」
振り返るとそこにはいつも一緒にお鍋を作ってくれるオタルおばあちゃんがいました。
わたしを見て震えるとよたついた足で近づいてきます。
「ツキジちゃんなんだね!?
馬鹿!みんなに心配かけて何処行ってたんだいっ!?」
「ツキジちゃんが帰ってきたって!?
こりゃわやだ!みんな来てくれー!!」
「この歳のジジイを泣かすんじゃねえよ…!!
泣かせるならお嫁に行くか次のらいぶだけにしな!!」
わたしの周りはすぐに村のみんなでお団子状態。
帰ったきたことに対する喜びや心配させたことへの怒り、感極まって涙を流す方もいました。
そして最後に村長さんが来てわたしの手をぎゅっと握ってくれました。
「…ツキジ、私たちの娘よ。よく無事で帰ってきた。
お前が皆にどれだけ心配をかけたか、わかっておるな?」

「…………っ。」

「……………………ごめんなさい。」

「ごめ゛ん゛な゛ざあ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛い゛っ゛!!」
─
小一時間ほど村長から説教をいただいた数日後。
わたしは再び漁業のお手伝いをしながらイベントの準備を再開しています。
約10日と大きな遅れは出ましたが村のみんなや協力してくれるスタッフさんの助けもあり
延期もなく無事に開催できそうです!
新しいお祭りなのでかっこつけて”ユキグレフェス”と命名しましたし
手ぶらも大歓迎だけどお得な特典たっぷりの前売り券の発売も決定。
出店もたくさん!極寒の村でもホットになれるカプサイシンたっぷりなお鍋も用意して…
県内で活躍するレスラーさんにお願いしたらイベントを開催してくれることになりました。
そしてもちろんわたし、この村のアイドルツキジちゃんも特設ステージでライブするんですよ!
握手にサインはもちろん、チェキも大歓迎なので…ぜひ遊びに来てくださいね!
えへへ…予算ギリギリ……なので……。
村に戻ってきてから村のみんなや周りの方によく言われるのは
「ツキジちゃん、前よりも表情が柔らかくなったね。」
「今の方が自然でとてもかわいいよ。」
などのお褒めの言葉。今まではやっぱり表情や態度が固かったんだなってやっとわかりました。
クラスにも馴染めるようになりましたしそこでも友達ができたんですよ。
改めて島での生活はとても良い方向にわたしに影響を与えたのだと思いました。えへへ…。
そして一人でいる時にする習慣がまた一つ増えたんです。
島でいただいたお守りを上着の下に身に着けていまして、それをきゅ…て両手で包むととても安心するんです。
送り主曰くこれは荒れる波から漁師さんを守るお守り。でもこれは鰓呼吸ができるのに陸上で生きているわたし
にとってはそこで起きる時代の荒波からも守ってくれるような気がして。
えへへ…実質水陸両用、ですね。

「…………ありがとう。フーガさん。
これからもこのお守りにはわたしと村のみんなを守ってもらいますからね。」
-ほんとうにおしまい-