Eno.811 学者の日記

答えのこと、みんなのこと

 妖精は僕らの仲間からの離脱を宣言した。
 勇者は一人、嵐の洞窟で聖剣を抜く修行を始めた。
 家事雑事はなし崩しに神官の役目になった。

 当初、いつも家事を妖精に投げてる神官のことだから、どうせ家事を投げ出して泣き言でも言うんじゃないかと思ってた。
 でも、神官は投げ出すどころかてきぱきと仕事をやってのけた。
 聞けば早くに親を亡くして身の回りのことは一人で出来るらしい。
 それは僕にとって、まあまあ衝撃だった。


 僕らには目的がある。
 それは世界を救うことだったり、
 魔王を守ることだったり、
 縄張りを守ることだったり、
 愛を説くことだったり、
 払った税よりも多く福祉を享受することだったり。

 それとは別に、僕らは何かを欲している。
 それが僕にとっては『みんなをお手伝いサポートすること』で、
 神官にとっては、『妖精に叱られること』だった、
 答えは人によって違う、そんな当たり前で、ただそれだけの話。


 その後いろいろあってなんとか上手く収まったけれど。
 この旅の英雄譚を語るには、僕は少々役不足だ。
 パーティに入ってまだ間もないし、
 何しろ勇者たちみたいな主人公じゃない。
 魔王軍も加入して、このパーティはさらに多様性を増した。
 僕がいなくても、僕の役割は誰かが補ってくれるだろう。
 その上で、僕に出来ること、僕の目的、僕が欲しいものを考え直したとき、
 僕は、この船を降りる決意をした。


 僕が目指すものは、法による人と魔族のEVEN-EVENの関係の確立だ。
 どちらかが勝とうとして、もしくはどちらも勝とうとして無理をすることのない互いの共存。
 人がいて、魔族がいて、その真ん中に解決すべき問題がある。
 僕が欲しいものは、きっとその過程にあるだろう。