Q6:旅行の感想は?
七五三崕兄妹が家に帰ったのは、当初の予定を半月ほど過ぎてからだった。

「楽しい旅行だったよ。
これはお土産ね。村の伝承をまとめたレポートと、オニガミさまのイメージ彫刻と、郷土料理のレシピ」

「レポートって、お前……異世界に行って村興しをした、などという内容を誰が真面目に読むと思って……
百歩譲って、定期連絡船から落ちて行方不明になった後、一週間後に船籍不明の船舶によって港に送り届けられた、と言う事実があるとしても、
その過程で異世界などと言い出されてもな。……正気か?」
事前連絡もなく「やあ、帰ったよ」と、玄関にやって来たすとらに荷物を押し付けられ、大学生は渋い顔をした。
お互いに電話番号もメールアドレスも知っているはずなのに、行方不明の一報を聞いた後、今の今まで連絡はなかった。
それだけでも小言を言い聞かせたいところなのだが、パラパラと内容を見たレポートと言うのが、また問題である。

「残念ながら正気。証拠はないけれどね。
文明崩壊後の世界だとか、異世界だとか、そうした話は僕が確かめたわけじゃなくて、
漂着したトロピカル因習アイランド島に遺されていた、何者かの手記に書かれた内容だから」

「その島の名前もどうにかならないか? 誰が命名したんだ」

「名誉村長(暫定)だよ。
残念ながら、長い歴史と栄華を誇った島は、もう海に沈んでしまったのだけれどね」

「何が歴史だ。7日間で沈んだんだろう。
……ちょっと待て、このレシピも何なんだ。何故、材料の一部が黒塗りされている?」

「ああ……それは、村の掟で門外不出の、『特産品』があってね」

「含みを持たせた言い方をするな。どうせ地元の山菜やらキノコだろう」

「ちょっと幻覚が見える、あんまり害のない怪しいキノコはあったよ。
食べてみたいなら、君も村に行くと良い」

「待て。いや本当に待て。それは法に触れる食材じゃないだろうな?」
何故か、詳しく聞けば聞くほどに不安材料しか出てこないことに、大学生の眉間の皺が深くなる。
そんな彼の顔を見て、しかしすとらはからからと笑う。

「ふふ。それは大丈夫。
ちょっと変わっているけれど、危険のない長閑な村であるのは本当だよ。
単純に、また観光に行くなら、次は君も誘おうかと思ってね。運が良ければ、第二のトロピカル(中略)島に行けるかも」

「逆だ。逆。
短期間で沈む無人島に漂着するなど、相当に運が悪いぞ」

「珍しい体験だから、面白かったと思うんだけどなあ。
ふぃなも楽しんでいたよ。島の食材で作る、プリンやアイスも美味しかったし」

「……念の為の、最後の確認なんだが。
本当にそこは、無人島だったのか……?」