炎は南風に棚引いて
世界ってのはどうやら、自分がそう思っていたほど単純ではなく、
またそう思いたいほど複雑では無かったらしい。
魔王様が果てしなく長い時の中で抱えていた悩み。
あまりにも強大な問題であったそれは、オレに配下としての在り方を問うているかのようにも思えた。
…が、しかし。
他の面子の活躍もあってか、想像よりも遥か彼方の方向へと解決していった。

「湿っぽいツラして自分探しなんてしなくっても、幸せになれるモンなのかもなァ…」

「…あんなに毒気を抜かれた魔王様を目にしちゃあ、そう思わずにはいられねェよな…!」
悲観も羨望も、もう必要ない。
生きる意味なんざ求めなくても、面白おかしく生きて行く事はできるんだと、何故か勇者たちを見て確信できた。

「さっさと魔王軍での引き継ぎを終わらせたら、新大陸に同族でも探しに行くかねェ…」
それもただの動機づけに過ぎないけれど。
今はただ、この目で外を見てみたい。
そんな事を考えながら、船の甲板で夜空を眺める。
ぴゅうと南風に吹かれて、頭の炎がふわりと棚引いた。