Eno.173 ペリペティアの日記

終:いつか少女は伝説を

 
 船に乗る。ともだちに贈り物をして、
 海面を眺めていた。

 様々なことがあったアヒル島。
 素敵な思い出の数々を、忘れない。

 そして気が付いたらぼくは──

「…………あれ?」


 見覚えのある家の前。
 扉叩いたらママが出てきて、
 ぼくを見つけて抱き締めて、大泣きしていたの。

 …………そっか。
 1週間も消えてたもんね、
 心配されて当たり前だよねぇ。

「──ただいま!」


 冒険家は生きて帰ってこそ、でしょ?
 ぼくはちゃんと、帰ってきたよ。

 話したいことがいっぱいあるの。
 ママ、聞いてくれるよね。

  ◇

「──そして少女は船に乗り、
 しばらく時を過ごした後に、
 気付いたら元の世界に居たのです」

「少女の短い冒険は終わりました。
 宝石みたいな宝物を、いっぱい抱いて」


 語り終える。拍手の嵐。
 えへ、とペリペティアは笑っている。

「聞いてくれてありがとう!
 これはぼくの実際に経験した、
 不思議な冒険のお話でした!」


 あれから、数ヶ月。
 ぼくは今、故郷から離れた街にいる。

 傍らにはエレルお兄さん。
 ぼくの故郷でアヒルバトラーをやっていた、
 パパとぼく以外の人間だ。

 冒険に出たいと強く願うぼく。
 だけど女の子の一人旅が心配だという、
 ママの気持ちも確かにそうで。

 それでもこの憧れを止められなかったぼくは、
 近所のエレルお兄さんに相談したんだ。
 そしたらね。

「ははっ、なら、
 俺がついていってあげてもいーぜ、
 ペリペティアの嬢ちゃん」


 ついてきてくれることになったんだ。
 旅の資金はあるし、それならと、ママもOKを出したの。
 だからぼくは、アクアを連れて旅立ったんだ。
 それが、ここまでの経緯。

「……オーコ、リユ」


 つぶやいた。

 冒険はまだ始まったばかり。
 語れるようなことは、そこまでないけれど。
 いつかまた会えた時、いっぱい語れるようにするからさ!
 だから──

「おい、ペリペティアの嬢ちゃん。
 そろそろ移動しねぇと間に合わねぇぞ!」


「はぁい、エレル! 待ってー!」


 大きなその背を追い掛ける。
 傾いてオレンジに染まる港町。
 帽子かぶって、サンダルの音鳴らして!

 パパ。ぼくはパパみたいな冒険家になる。
 絶対に帰ってくる冒険家にもなるよ。
 パパにも負けない冒険をするから、
 どうか遠くで、見守っていて欲しいんだ。

──ぼくの伝説はまだ、始まったばかりだ。



【To be continued……?】