Eno.809 黄鵞ハトリの日記

闘鴨の書:二十四の巻

そろそろ元の地へ戻る時が近いような気がしている。
何か土地が見えるというわけではないのだが、そういう予感がある。
これが、海が”開いている”という現象なのだろうか。
今すぐというわけではなさそうだが、あと数刻。この船の喧騒を楽しむこととする。

孤島に遭難…という、事実だけ書けば絶望的な状況から始まったが……思い返せば、様々なアヒルバトラーとの交流、戦い、そして古代アヒル文明の伝説……実に稀有な体験をしたと思う。貴重で、良い思い出となろう。
遭難生活であったことは変わりないのだが、喉元を過ぎたから苦しかった時間は忘れたのだろうな。

他の者達は何処へ帰るのだろうか。
此処にいる者たちは、もしかすれば世界や時代が違うのかもしれない、という話があった。
信じがたいが、この島の経験自体がもはや不思議に包まれているようなものだ。
アヒルバトルに詳しくない者や、御伽話に出てくる生き物のような姿をしている者もいた。否定するのも難しかろう。
……とはいえ、中には知古同士の者もいた為、全てが全てというわけではないのだろうが。
それと同時に、世界や時代が違うとしても、皆がアヒル像によってこの島に導かれ、出会ったというのも事実だ。
二度と出会えないということもあるまい。アヒル同士の縁が繋がれば、どんな奇跡も起こり得よう。そう信じたい。


さて、いざ帰るとなると、実に7日……今日を入れて8日か、行方不明になっていたことになる。
間違いなく、里の者達を心配させていよう。まずは無事を伝え、彼らを安心させねばなるまい。
落ち着いたら島の土産話でもしてやるとしよう。

それからは…徐々に日常に戻ってゆくのが自然な流れと言えようが。
……我が里は隠れ里故、皆無というほどではないのだが……外の催しへ足を運ぶ機会が少ない。
うむ、何処か大きな大会で知っている名前を探してみる、というのも悪くはないかもしれん。
これも良い機会を得られたと思おう。
アヒル像に導かれ、そして戦ったアヒルバトラー同士、繋がった縁がきっと引き合わせてくれような。