Eno.306 岬カノアの日記

そのご3-見つけた道筋

【隠蔽解除】を単独で決行だと。一体誰が…。



ぼくは、どこに行けばいいかと考えていたところに飛び込んできた一報。
おじさんが持ってきているラジオから聞こえる実況によれば、
地区のあらゆる場所で爆発音が鳴り響きその破片が宙を舞う随分と派手な爆破テロの体裁で決行されたらしい。
現状推定被害は地区全体の6割強。
完全に破壊には至らなかったようだけどその成果は十分すぎた。
今まさに向こうでこのニュースを聞いているぼくの世界の人たちは
妖精妖怪たちの中に紛れ潜む【敵】とそれと戦う人々がいることを知りたくなくても知ることになったんだから。

 暮らしていた町は誰かに救われた。
  救ってくれたのは誰だろう?


なんとなく思い浮かぶ、完ぺきな導線を組みつつ花火師に徹していた刑事さんの顔。
そんなはずはないよね、いやあり得る。もしくは、オー姉さんか?
などと情報が混線していく。

もう少し、今後について整理しようと一人誰もいない甲板でタバコ島の方角を。
御柱の先端だけが【絶対領域ジーランティス】の海にポツンと浮かんでいる。数時間前まで並走していた蟹工船の姿はもうない。
帰りたい場所の海にたどり着いたんだね一緒に乗っていった、みんなも送り届けられたかな。

何気ない連絡はここで書けば届くかもしれない。-


みんなへ
この手紙が届くころには、帰りたい場所についているんじゃないかな。
ぼくは、いつかみんなとまた会える場所を探すことにしたんだ。



最後の最後まで、ぼくは誰にも島に着いた理由を話せなかった…、
話したとしても誰にも理解できない別世界で起きている話だろうなと、手紙を書く手は止まり何もない、【怪物そのものの海ジーランティス】に御柱が完全に沈み切るのを見届けた。
ここに捧げてしまった道具がきっかけでここに流される人が生まれるなら、帰り道を作ろう。
 海域を抜けた一番最初の海に入るとぼくたち以外にもほかの陸地だった場所から
救出してきた人をのせた他の救助船や自作の船が何隻か港に停泊しているみたいだった。
ぼくが乗る船も船内清掃のため寄港し一度下ろされ、港を行きかう人々の姿を見ていると妙な親近感があり、

「…?この街、私たちと最も接している世界の一部でしょうか。」


と、おじさんがつぶやいた。

正統派異世界出身と思われる人たちがぞろぞろと船を降り乗り継ぎ手続きをする人や、ここの役場に向かって走っていく人の姿。なかには、ぼくとよく似た現代風の装いの人もいた。待ちゆく人々の話を聞いたところによると、
 ここは【絶海領域ジーランティス】とは別の形であらゆる世界に接していて時を共にしている【海開き】の際一番最初に接続する【世界】でいつの間にか港が整備され人々が暮らし始めた名前のない港だという。

ここは、みんなにまた会える場所になる可能性がある、

「ぼくは、この街で暮らします。敵もここなら感知できないと思います。」


おじさんは少々驚いたような反応を見せ、ぼくがいた世界とここを確実に結ぶ航路を共に作っていこうと約束してそれぞれに選んだ場所で、昔の続きや新しい日々に向かっていく。

 会える日まで…じゃないな、
【あの海】から脱した人たちの為にもこの港をもっと素敵な街に作り上げる。
いつか【あの怪物】に終を告げることができるように。